近年、Stable DiffusionやMidjourneyといった画像生成AIの登場により、誰でも簡単にイラストを作成できるようになりました。

プロンプトを入力するだけで、プロ顔負けのクオリティを持つ画像が数秒で生成される時代です。

しかし、その手軽さの裏には著作権侵害のリスクが潜んでいます。

「生成AIで作ったイラストを商用利用しても大丈夫なのか」「特定のキャラクターに似た画像を生成したら違法になるのか」といった疑問を持つ方は少なくありません。

実際、文化庁は2023年6月に「AIと著作権」に関するセミナーを開催し、生成AIをめぐる著作権の考え方を示しました。

また、海外では画像生成AIの開発企業に対する集団訴訟が相次いでいます。

本記事では、生成AIイラストに関する著作権の基本知識から侵害リスク、そして具体的な対策までを体系的に解説します。

企業のマーケティング担当者からクリエイター、個人で画像生成AIを活用したい方まで、この記事を読めば生成AIと著作権の関係性を正しく理解できるでしょう。

ビジネスでAIを安全に活用するための知識として、ぜひ最後までお読みください。

生成AIと著作権の基本知識


生成AIによるイラスト作成と著作権の関係を理解するには、まず著作権法の基本を押さえておく必要があります。

著作権は創作者の権利を守るための法律ですが、その仕組みは意外と複雑です。

ここでは、著作権法の基本的な仕組みから、著作物として保護される要件、そしてアイデアと表現の違いについて詳しく説明します。

著作権法の基本的な仕組み

著作権法は、創作者の権利を保護しながら文化の発展に寄与することを目的として定められた法律です。

日本の著作権法第1条には、著作物の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図ることで文化の発展に寄与するという目的が明記されています。

著作権は、作品を創作した時点で自動的に発生する権利です。

特許権や商標権のように登録や申請の手続きは必要ありません。

絵を描き終えた瞬間、文章を書き終えた瞬間に、その作品には著作権が発生します。

著作権の内容は大きく分けて2種類あります。

権利の種類 内容 具体例
著作者人格権 著作者の人格的利益を保護する権利 公表権、氏名表示権、同一性保持権
著作財産権 著作物の経済的利益を保護する権利 複製権、公衆送信権、翻案権、譲渡権

著作者人格権は、作品を公表するかどうかを決める権利や、自分の名前を作品に表示する権利などを含みます。

この権利は著作者本人だけが持つもので、他人に譲渡することはできません

一方、著作財産権は作品をコピーしたり、インターネットで公開したり、改変したりする際に関わる権利です。

こちらは契約によって他者に譲渡したり、利用を許諾したりすることが可能です。

著作権を侵害した場合、民事上の責任と刑事上の責任の両方を問われる可能性があります。

民事上の責任としては、損害賠償請求や差止請求の対象となります。

刑事罰については、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金が科される可能性があり、法人の場合は3億円以下の罰金となります。

このように、著作権侵害は決して軽視できない問題なのです。

著作物として保護される要件

著作権法で保護される「著作物」には、明確な定義があります。

著作権法第2条第1項第1号によると、著作物とは思想または感情を創作的に表現したものであり、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものと定められています。

この定義から、著作物として認められるためには4つの要件を満たす必要があることがわかります。

  • 思想または感情が含まれていること
  • 創作性があること
  • 表現されたものであること
  • 文芸、学術、美術、音楽の範囲に属すること

まず、「思想または感情」という要件についてです。

これは人間の精神的な活動の成果であることを意味しています。

単なるデータや事実の羅列は、思想や感情が含まれていないため著作物には該当しません。

たとえば、天気予報のデータや株価の推移といった客観的な情報は、著作物として保護されません。

次に、「創作性」という要件があります。

創作性とは、作者の個性が何らかの形で表れていることを指します。

ただし、高度な芸術性や独創性が求められるわけではありません。

ありふれた表現や誰が作っても同じになるような表現でなければ、創作性は認められる傾向にあります。

「表現されたもの」という要件は、頭の中にあるアイデアではなく、外部に表現されたものでなければならないことを示しています。

心の中で思い描いた物語やメロディは、それを文章や楽譜、録音などの形で外部に出さない限り、著作物としては認められません。

最後に、著作物は文芸、学術、美術、音楽のいずれかの範囲に属する必要があります。

工業製品のデザインなどは、意匠法など別の法律で保護される場合があります。

生成AIで作成したイラストについては、これらの要件を満たすかどうかが重要な論点となります。

アイデアと表現の違い

著作権法において、保護されるのは「表現」であって「アイデア」ではないという原則があります。

この「アイデア・表現二分論」は、著作権を理解するうえで非常に重要な概念です。

たとえば、「猫がネズミを追いかける」というストーリーのアイデア自体は著作権で保護されません。

しかし、そのアイデアをどのように表現するか、つまり具体的な文章やイラスト、映像として形にしたものは著作物として保護されます。

この原則は、生成AIとイラストの著作権を考えるうえで重要な意味を持ちます。

  • 画風やタッチそのものは「アイデア」であり、著作権の保護対象外
  • 特定のキャラクターのデザインは「表現」であり、著作権の保護対象
  • 色使いの傾向やテーマは「アイデア」に近く、保護されにくい
  • 具体的な構図や配色、細部の描写は「表現」として保護される可能性がある

つまり、ある画家の画風を真似ること自体は著作権侵害になりにくいのです。

しかし、その画家が描いた特定の作品とそっくりなイラストを生成した場合は、著作権侵害となる可能性があります。

この違いを理解していないと、「画風を真似しただけだから問題ない」と誤解してしまうかもしれません。

画風とは別に、特定の作品の表現を模倣していないか、慎重に確認する必要があるのです。

生成AIは膨大な画像データを学習しているため、意図せず既存の著作物に酷似した画像を生成してしまうリスクがあります。

AIを活用する際には、アイデアと表現の境界線を常に意識することが大切です。

AI開発・学習段階における著作権の考え方


生成AIと著作権の問題は、大きく2つの段階に分けて考える必要があります。

1つ目は、AIを開発・学習させる段階です。

2つ目は、AIを使って画像を生成・利用する段階です。

文化庁もこの2つを明確に区別して議論を進めています。

ここでは、AI開発・学習段階における著作権の考え方について詳しく解説します。

著作権法第30条の4とは

著作権法第30条の4は、一定の条件のもとで著作物を自由に利用できることを定めた規定です。

2018年の著作権法改正によって新設されたこの条文は、AI開発における著作物の利用を念頭に置いたものとして注目されています。

条文の内容を簡潔にまとめると、「著作物に表現された思想又は感情を享受することを目的としない利用」であれば、著作権者の許諾なく著作物を利用できるとされています。

ここでいう「享受」とは、著作物の視聴などを通じて知的・精神的欲求を満たすことを意味します。

用語 意味 具体例
享受目的の利用 著作物の内容を鑑賞・理解する目的での利用 映画を観る、音楽を聴く、絵画を鑑賞する
非享受目的の利用 著作物の内容の鑑賞を目的としない利用 情報解析、技術開発、検証

AIの学習において、大量の画像データを読み込む行為は「非享受目的の利用」に該当すると考えられています。

AIは画像の芸術的価値を鑑賞しているわけではなく、パターンや特徴を数値化して学習しているだけだからです。

この規定により、日本では営利・非営利を問わず、AI学習のために著作物を利用することが原則として認められています。

権利者がオプトアウト(利用拒否)する仕組みもないため、世界で最もAI開発者に有利な法制度と評価されることもあります。

ただし、この規定には例外も設けられており、すべての場合に自由に利用できるわけではありません。

学習目的での著作物利用が認められるケース

著作権法第30条の4に基づき、AI学習目的での著作物利用が認められる典型的なケースがいくつかあります。

まず、情報解析のためにウェブ上の画像を収集し、AIに学習させる行為は原則として適法とされています。

これは、学習過程においてAIが画像の芸術的価値を享受しているわけではないためです。

  • ウェブ上に公開されている画像を収集してデータセットを作成する
  • 収集した画像データを前処理して学習用に加工する
  • 機械学習のアルゴリズムによって画像の特徴を抽出する
  • 学習済みモデルを構築して画像生成AIを開発する

これらの行為は、著作物の内容を人間が鑑賞することを目的としていません。

そのため、第30条の4の「非享受利用」に該当し、著作権者の許諾なく行うことができるのです。

また、研究機関や大学などが学術目的でAIを開発する場合も、同様に認められています。

企業が商用の画像生成AIを開発する場合であっても、学習段階における著作物の利用は許容される傾向にあります。

重要なのは、学習段階と生成・利用段階を分けて考えることです。

学習段階で著作物を利用することが適法であっても、その学習結果を用いて生成した画像の利用が適法であるとは限りません。

AIの学習と、AIを使った画像生成は、著作権法上の異なる論点として扱われるのです。

著作権者の利益を不当に害する場合の例外

著作権法第30条の4には重要な但し書きがあります。

それは、著作権者の利益を不当に害する場合には、この規定が適用されないというものです。

つまり、たとえ非享受目的の利用であっても、著作権者に大きな不利益を与える場合は、許諾が必要になる可能性があります。

では、どのような場合に「著作権者の利益を不当に害する」と判断されるのでしょうか。

状況 判断の方向性
学習元の著作物と類似した画像を大量生成できるAIの開発 不当に害する可能性が高い
特定の作家の作品のみを学習させて画風を再現するAIの開発 不当に害する可能性がある
多様な作品を学習して一般的な画像生成能力を獲得するAIの開発 不当に害する可能性が低い
海賊版サイトから収集したデータで学習させる行為 不当に害する可能性が高い

たとえば、特定のイラストレーターの作品だけを大量に学習させ、その作家の画風を完全に再現できるAIを開発する場合を考えてみましょう。

このようなAIが広まれば、その作家のイラストの需要が減少し、仕事を奪われる可能性があります。

この場合、著作権者の利益を不当に害するとして、例外規定が適用される可能性があるのです。

また、学習データの収集元が違法なサイトである場合も問題になります。

海賊版サイトや無断転載サイトからデータを収集してAIを学習させる行為は、著作権者の利益を害する行為として認められない可能性が高いでしょう。

企業がAIを業務に導入する際には、こうした法的リスクを十分に理解しておく必要があります。

名古屋でWebコンサルティングを手がける株式会社エッコでは、AI導入に関するご相談も承っております。

法的リスクを踏まえた適切なAI活用について、専門家の知見を活かしたアドバイスが可能です。

生成・利用段階における著作権の考え方


AIの学習段階とは異なり、生成・利用段階では通常の著作権侵害と同じ判断基準が適用されます。

つまり、AIが生成したイラストであっても、人間が描いたイラストと同様に著作権侵害の判断が行われるのです。

ここでは、著作権侵害の成立に必要な「類似性」と「依拠性」について詳しく解説します。

類似性の判断基準

類似性とは、後発の作品が既存の著作物と似ているかどうかを判断する基準です。

著作権侵害が成立するためには、単に「似ている」というだけでは不十分で、既存著作物の「本質的特徴」を直接感得できるかどうかが重要になります。

本質的特徴とは、その著作物ならではの創作的な表現部分を指します。

誰が作っても同じになるような部分や、ありふれた表現は本質的特徴には含まれません。

類似性の判断において重視されるポイントを整理すると、以下のようになります。

  • 構図やポーズなど、作品全体の配置が似ているか
  • キャラクターの顔立ちや体型など、具体的なデザインが似ているか
  • 色使いや配色パターンが特徴的に一致しているか
  • 細部の描写や装飾において共通点があるか
  • 全体的な印象として、同じ作品から派生したと感じられるか

たとえば、「青い髪の少女が剣を持っている」という設定だけでは、類似性は認められにくいでしょう。

これは多くの作品に共通するありふれた設定だからです。

しかし、特定のキャラクターの髪型、目の形、服装のデザイン、武器の形状などが細部まで一致している場合は、類似性が認められる可能性が高くなります。

生成AIの場合、プロンプトの内容によっては既存キャラクターに酷似した画像が出力されることがあります。

このような画像を商用利用すると、類似性の観点から著作権侵害とみなされるリスクがあるのです。

依拠性の判断基準

依拠性とは、後発の作品が既存の著作物を参考にして作られたかどうかを判断する基準です。

著作権侵害が成立するためには、類似性だけでなく依拠性も必要とされています。

偶然の一致、つまり既存の著作物を知らずに独自に創作した結果として似てしまった場合は、依拠性がないため著作権侵害にはなりません。

依拠性の判断要素 内容
既存著作物へのアクセス可能性 後発の作者が既存の著作物に接する機会があったか
既存著作物の周知性 既存の著作物がどの程度知られているか
類似の程度 偶然とは考えにくいほど酷似しているか
創作の経緯 どのような過程で後発の作品が作られたか

人間が絵を描く場合、「その作品を見たことがない」と主張すれば依拠性を否定できる可能性があります。

しかし、生成AIの場合は状況が異なります

生成AIは膨大な画像データを学習しており、学習データの中に既存の著作物が含まれている可能性が高いからです。

AIの学習データに特定の著作物が含まれていた場合、そのAIが生成した類似画像には依拠性が認められるのでしょうか。

この点については専門家の間でも見解が分かれています。

一説では、AIが学習データとして取り込んでいる以上、依拠性は認められやすいとする考え方があります。

別の説では、AIはデータのパターンを抽出しているだけで、特定の著作物を参照しているわけではないから依拠性は認められにくいとする見解もあります。

現時点では明確な判例が少なく、生成AIにおける依拠性の判断基準は確立されていないのが実情です。

著作権侵害が成立する条件

著作権侵害が成立するためには、類似性と依拠性の両方が認められる必要があります。

どちらか一方だけでは、著作権侵害は成立しません。

これは生成AIによるイラストについても同様です。

著作権侵害の成立要件を整理すると、以下のようになります。

  • 既存の著作物が存在すること
  • 後発の作品と既存著作物との間に類似性があること
  • 後発の作品が既存著作物に依拠して作られたこと
  • 著作権者から利用の許諾を得ていないこと
  • 権利制限規定に該当しないこと

生成AIでイラストを作成する場合、多くのケースでは著作権者から許諾を得ていません。

そのため、類似性と依拠性が認められれば、著作権侵害が成立する可能性があります。

特に注意が必要なのは、意図せずに著作権侵害を犯してしまうリスクです。

プロンプトに特定のキャラクター名を入れていなくても、AIが学習データをもとに既存のキャラクターに似た画像を生成することがあります。

このような画像をそのまま商用利用すると、思わぬ形で著作権侵害に問われる可能性があるのです。

生成AIを業務で活用する際には、出力された画像が既存の著作物に類似していないか、必ず確認するプロセスを設けることをおすすめします。

AIイラストに著作権は発生するのか


ここまでは、AIイラストが既存の著作物の著作権を侵害するリスクについて解説してきました。

では、AIが生成したイラストそのものに著作権は発生するのでしょうか

この問題は、生成AIを活用する多くの人が抱く疑問です。

結論から言えば、AIイラストに著作権が発生するかどうかは、人間の創作的関与の程度によって決まります。

人間の創作的関与がない場合

AIが自律的に生成したイラストには、原則として著作権は発生しません

これは日本だけでなく、世界の多くの国で共通する考え方です。

著作権法が保護するのは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」です。

AIには人間のような思想や感情がないため、AIが単独で生成したものは著作物の定義に当てはまらないのです。

  • 簡単なプロンプトを入力してAIにイラストを生成させた場合
  • AIの出力をそのまま使用し、人間が手を加えていない場合
  • ランダム生成機能などでAIに任せきりにした場合

これらのケースでは、生成されたイラストに著作権は発生しないと考えられています。

つまり、そのイラストは誰のものでもなく、第三者が自由に使用しても著作権侵害にはならないということです。

これは生成AIを活用する側にとって重要な問題です。

せっかく時間をかけてプロンプトを調整し、理想的なイラストを生成したとしても、そのイラストに著作権がなければ、他者に無断でコピーされても法的に対抗できません。

ビジネスでAIイラストを活用する場合、この点を十分に理解しておく必要があります。

AIを道具として使用した場合

一方で、人間がAIを「道具」として使用し、創作的な関与をした場合は、生成されたイラストに著作権が発生する可能性があります。

文化庁の見解によると、人間が思想・感情を創作的に表現するための道具としてAIを使用したと認められる場合、その生成物は著作物に該当し得るとされています。

人間の関与の程度 著作権発生の可能性
簡単なプロンプトのみで生成 低い
詳細なプロンプトで具体的に指示 可能性あり
生成後に人間が加筆・修正 高い
AIの出力を素材として大幅にアレンジ 非常に高い

たとえば、非常に詳細なプロンプトを作成し、構図や色使い、キャラクターのデザインなどを具体的に指示した場合はどうでしょうか。

この場合、プロンプト作成の過程に人間の創作性が認められる可能性があります。

また、AIが生成した画像をもとに、人間が大幅な加筆や修正を行った場合も、著作権が発生しやすくなります。

人間の創作的関与の「量」よりも「質」が重要であるという指摘もあります。

単に長いプロンプトを入力すれば良いわけではなく、そのプロンプトにどれだけ創作的な表現が含まれているかがポイントになるのです。

ただし、どの程度の関与があれば著作権が認められるかの具体的な基準は、まだ確立されていません。

海外の判例と日本への影響

海外、特に米国では、AIイラストの著作権に関する重要な判例が出ています。

これらの判例は、日本における今後の議論にも影響を与える可能性があります。

2022年、米国著作権局は、AIが生成した画像の著作権登録を拒否しました。

申請者は自身が作成したプロンプトに創作性があると主張しましたが、著作権局は**「人間の創作的関与」が不十分である**として登録を認めませんでした。

  • 「Zarya of the Dawn」事件では、AIが生成した画像を使用したコミックの著作権が問題になった
  • 米国著作権局は、物語の構成など人間が創作した部分の著作権は認めた
  • しかし、AIが生成した画像部分については著作権を否定した
  • この「分割判断」は、AIイラストの著作権を考えるうえで重要な先例となっている

この判例からわかるのは、AIが生成した部分と人間が創作した部分を分けて考える必要があるということです。

日本でも同様の考え方が適用される可能性があります。

2023年の連邦裁判所判決(Thaler v. Perlmutter事件)でも、人間の著作者性が著作権の根幹であるという原則が確認されました。

今後、日本においても同様の訴訟が起きれば、これらの海外判例が参考にされることは十分に考えられます。

AIイラストを業務で活用する企業は、こうした国際的な動向にも注目しておくべきでしょう。

著作権侵害となる具体的なケース


ここからは、生成AIイラストが著作権侵害となる具体的なケースを見ていきます。

どのような行為がリスクを高めるのか、実例を交えて解説します。

意図的な侵害だけでなく、知らないうちに侵害してしまうケースもあるため、十分な注意が必要です。

特定キャラクターに似たイラストの生成

最もリスクが高いのは、既存の著名なキャラクターに似たイラストを生成するケースです。

アニメや漫画、ゲームなどの人気キャラクターは、詳細なデザインが著作権で保護されています。

プロンプトに直接キャラクター名を入力した場合はもちろん、キャラクターの特徴を詳細に記述した場合も問題になる可能性があります。

行為 リスクレベル 理由
プロンプトにキャラクター名を直接入力 非常に高い 明確な依拠性が認められる
キャラクターの外見的特徴を詳細に記述 高い 類似性と依拠性が認められやすい
特定作品の世界観を指定して生成 中程度 偶然の類似でない可能性がある
一般的な特徴のみで生成 低い 類似しても偶然の一致と主張しやすい

たとえば、「金髪でツインテール、黒いリボンをつけた魔法少女」というプロンプトを入力したとします。

これだけでは特定のキャラクターを指定していないように見えます。

しかし、AIがこのプロンプトから、著名なキャラクターに酷似した画像を生成する可能性は十分にあります。

出力された画像が既存キャラクターに似ていた場合、プロンプトの内容に関わらず著作権侵害のリスクが生じるのです。

特に商用利用する場合は、出力画像と既存キャラクターとの類似性を慎重にチェックする必要があります。

特定イラストレーターの画風を模倣した場合

特定のイラストレーターの画風を意図的に再現しようとするケースも問題になり得ます。

前述のとおり、画風やタッチそのものは「アイデア」であり、著作権では保護されません

しかし、だからといって完全に自由というわけではありません。

  • 特定の作家名をプロンプトに入力して画風を再現する行為
  • 学習データにその作家の作品が含まれていることを前提とした利用
  • 生成した画像を「○○風」として販売する行為

これらの行為は、直接的には著作権侵害に該当しないかもしれません。

しかし、不正競争防止法やパブリシティ権の観点から問題になる可能性があります。

また、日本のクリエイター団体からは、画風の模倣によって仕事を奪われることへの強い懸念の声が上がっています。

文化庁でも、この問題に関する議論が続けられています。

法的にグレーな領域であっても、倫理的な観点から控えるべき行為と言えるでしょう。

将来的には法改正によって規制が強化される可能性もあります。

企業としてAIイラストを活用する場合、レピュテーションリスクの観点からも、特定作家の画風模倣は避けることをおすすめします。

既存著作物をプロンプトに入力した場合

既存の著作物の画像をAIに読み込ませて類似画像を生成する機能も、著作権侵害のリスクが高い行為です。

Image to Image(img2img)と呼ばれるこの機能は、元となる画像の特徴を参考にして新しい画像を生成します。

この場合、元の画像への依拠性は明確です。

生成された画像が元の著作物と類似していれば、著作権侵害が成立する可能性が高くなります。

  • 他者が描いたイラストを元画像として使用する行為
  • 著作権で保護された写真を加工の元にする行為
  • キャラクターの公式イラストを参照画像として入力する行為

これらはいずれも著作権侵害のリスクが非常に高い行為です。

「AIが生成したから自分のオリジナル」という主張は通用しません

元の著作物に依拠して生成した以上、その著作権者の権利を侵害している可能性があるのです。

img2img機能を使用する場合は、元となる画像の著作権を必ず確認しましょう。

自分で撮影した写真や、著作権フリーの素材を使用するのが安全です。

国内外の訴訟事例と動向


生成AIと著作権をめぐっては、世界各地で訴訟が起きています。

これらの訴訟の結果は、今後のAI利用のルールに大きな影響を与えます。

最新の動向を把握しておくことは、リスク管理の観点から重要です。

米国での集団訴訟の状況

米国では、画像生成AIの開発企業に対する大規模な集団訴訟が複数提起されています。

2023年1月、アーティスト3名がStability AI、Midjourney、DeviantArtの3社を相手取り、サンフランシスコの連邦裁判所に訴訟を起こしました。

原告側の主張は、これらの企業が著作権者の許諾なく膨大な画像を学習データとして使用したというものです。

訴訟 被告 主な争点
アーティスト集団訴訟(2023年1月) Stability AI、Midjourney、DeviantArt 無断での学習データ利用
Getty Images訴訟(2023年2月) Stability AI 商業用写真データの無断学習
作家集団訴訟(2023年7月) OpenAI、Meta テキストデータの無断学習

Getty Imagesも2023年2月に、Stability AIを相手取って訴訟を起こしています。

同社は、自社が権利を持つ1,200万枚以上の写真が無断で学習に使用されたと主張しています。

これらの訴訟はまだ係争中であり、最終的な判決は出ていません。

しかし、米国の裁判所がどのような判断を下すかは、世界のAI開発に影響を与えることは間違いありません。

特に注目されているのは、「フェアユース(公正な利用)」の抗弁が認められるかどうかです。

AI企業側は、学習目的での利用はフェアユースに該当すると主張しています。

一方、権利者側は、商業目的での大規模な利用はフェアユースの範囲を超えていると反論しています。

日本国内での議論と対応

日本では、米国ほど大きな訴訟は起きていませんが、活発な議論が行われています。

文化庁は2023年以降、AIと著作権に関する検討会を継続的に開催しています。

2023年6月には「AIと著作権」と題したセミナーが開催され、現行法の下でのAIの扱いが整理されました。

  • 文化審議会著作権分科会でAIと著作権に関する議論が継続
  • クリエイター団体からは学習データ利用への規制強化を求める声
  • 産業界からはイノベーション促進のための自由な利用を求める声
  • 両者の主張は平行線をたどっており、合意形成には時間がかかる見込み

日本のクリエイター団体は、自分たちの作品が無断で学習に使用されることへの強い懸念を表明しています。

漫画家やイラストレーターの団体は、連名で声明を発表し、法的保護の強化を訴えました。

日本の著作権法第30条の4は、世界で最もAI開発者に有利な規定と言われています。

しかし、クリエイターの声を受けて、この規定の見直しを求める動きも出ています。

企業としてAIを活用する際には、こうした国内の議論の動向にも注意を払う必要があります。

今後の法改正の可能性

生成AIの急速な普及を受けて、著作権法の改正が行われる可能性は十分にあります。

特に以下のような点について、法改正の議論が行われています。

議論されているポイント 内容
オプトアウト制度の導入 著作権者がAI学習への利用を拒否できる仕組み
透明性の確保 AI開発者に学習データの開示を義務付ける
生成物の表示義務 AIが生成したことを明示する義務
著作権者への補償 学習データ利用に対する対価の支払い

EUでは2024年から施行されるAI規制法(AI Act)において、汎用AIモデルの開発者に学習データの概要開示を義務付けています。

また、AIが生成したコンテンツにはラベル付けが求められます。

日本でも同様の規制が導入される可能性があります。

法改正の動向を注視し、適切に対応できる体制を整えておくことが重要です。

AIを業務に導入している企業は、法改正によって現在の運用が違法になるリスクも想定しておくべきでしょう。

株式会社エッコでは、最新の法規制動向を踏まえたWebコンサルティングを提供しています。

AIを活用したマーケティング施策についても、法的リスクを考慮したアドバイスが可能です。

著作権侵害を避けるための対策

ここまで、生成AIイラストに関する著作権の問題点とリスクを解説してきました。

では、著作権侵害を避けながら生成AIを安全に活用するには、どのような対策を講じればよいのでしょうか。

具体的な対策を5つ紹介します。

生成物と既存著作物の類似性を確認する

生成AIが出力した画像は、必ず既存の著作物と類似していないか確認する習慣をつけましょう。

AIは膨大なデータを学習しているため、意図せず既存のキャラクターやイラストに酷似した画像を生成することがあります。

確認の方法としては、以下のようなものがあります。

  • Google画像検索などで類似画像を検索する
  • キャラクターデータベースサイトで類似キャラクターがいないか確認する
  • 同じ業界・ジャンルの有名作品と見比べる
  • 複数の人間の目でチェックする
  • 必要に応じて著作権に詳しい専門家に相談する

特に商用利用する場合は、より慎重な確認が必要です。

類似性の確認を怠ったまま商用利用すると、後から著作権侵害で訴えられるリスクがあります。

確認作業は手間がかかりますが、リスク管理の観点からは必須のプロセスです。

社内でAIイラストを使用する際のチェックリストを作成し、運用ルールを明確にしておくことをおすすめします。

特定の作家名やキャラクター名をプロンプトに使わない

プロンプトに特定の作家名やキャラクター名を入力する行為は避けるべきです。

これは著作権侵害のリスクを大幅に高める行為であり、依拠性が明確に認められてしまいます。

避けるべきプロンプト例 理由
「○○(キャラクター名)を描いて」 特定キャラクターへの依拠が明確
「○○(作家名)風のイラスト」 特定作家の作品への依拠が推認される
「○○(作品名)のような世界観」 特定作品への依拠が推認される
「○○のキャラクターに似た少女」 類似を意図した依拠が明確

代わりに、自分の言葉で具体的な特徴を記述することを心がけましょう。

「明るい茶色の髪、緑色の瞳、白いブラウスを着た少女」のように、一般的な特徴を組み合わせてプロンプトを作成します。

このようにすれば、特定の著作物への依拠を避けつつ、理想的な画像を生成できる可能性が高まります。

プロンプトの作成スキルを磨くことは、著作権リスクを下げるだけでなく、AIをより効果的に活用することにもつながります。

商用利用可能なツールを選ぶ

画像生成AIサービスには、商用利用の可否についてそれぞれ異なるルールが設定されています。

商用利用が明確に許可されているツールを選ぶことで、法的リスクを軽減できます。

  • 商用利用が明確に許可されているサービスを選択する
  • 有料プランで商用ライセンスが付与されるサービスを利用する
  • 学習データの出所が明確なサービスを優先する
  • 著作権クリーンな学習データのみを使用しているサービスを検討する

最近では、著作権フリーの素材のみで学習したAIや、クリエイターから許諾を得たデータで学習したAIも登場しています。

こうしたサービスを利用すれば、学習段階における著作権問題を気にせずに済みます。

ただし、学習データがクリーンであっても、出力された画像が既存の著作物に類似するリスクはゼロではありません。

ツール選びと並行して、出力画像の確認も引き続き行うことが重要です。

利用規約を確認する

画像生成AIサービスを利用する前に、必ず利用規約を確認することが大切です。

利用規約には、生成した画像の権利関係や商用利用の可否、禁止事項などが記載されています。

確認すべきポイント 内容
商用利用の可否 生成した画像を商用目的で使用できるか
著作権の帰属 生成した画像の著作権は誰に帰属するか
禁止されている用途 どのような使い方が禁止されているか
免責事項 著作権侵害が発生した場合の責任の所在
データの取り扱い 入力したプロンプトや生成した画像の取り扱い

多くのサービスでは、著作権侵害が発生した場合の責任はユーザー側にあると規定されています。

つまり、AIが生成した画像で著作権侵害が起きても、サービス提供者は責任を負わないということです。

利用規約を読まずに使用して、後から問題が発生するケースは少なくありません。

面倒でも、利用開始前に利用規約をしっかり確認しておきましょう。

また、利用規約は改定されることがあるため、定期的にチェックすることも重要です。

専門家に相談する

著作権の問題は専門性が高く、自己判断だけでは対応が難しいケースも多くあります。

特に以下のような場合は、専門家への相談を検討しましょう。

  • 生成した画像を大規模に商用利用する場合
  • 生成した画像が既存の著作物に類似しているか判断が難しい場合
  • 他者から著作権侵害の指摘を受けた場合
  • 社内でAI利用のガイドラインを策定する場合
  • 新規事業でAIイラストを活用する場合

著作権に詳しい弁護士や、知的財産の専門家に相談することで、適切なリスク評価と対策を講じることができます。

コストはかかりますが、訴訟リスクや損害賠償請求のリスクを考えれば、事前の相談は有効な投資と言えます。

また、AIの業務活用についてはWebコンサルティング会社に相談するのも一つの方法です。

名古屋のWebコンサル会社である株式会社エッコでは、AI導入に関する総合的なサポートを提供しています。

著作権リスクを踏まえた適切なAI活用方法について、お気軽にご相談ください。

まとめ

本記事では、生成AIイラストに関する著作権の問題について、基本知識から具体的な対策まで幅広く解説しました。

生成AIと著作権をめぐる問題は、大きく「AI開発・学習段階」と「生成・利用段階」に分けて考える必要があります。

日本の著作権法第30条の4により、学習段階での著作物利用は原則として許容されています。

しかし、生成・利用段階では、既存の著作物との類似性と依拠性によって著作権侵害が判断されます。

  • 生成AIイラストが既存著作物に類似していれば、著作権侵害のリスクがある
  • AIが生成したイラストには、原則として著作権が発生しない
  • 人間の創作的関与がある場合は、著作権が認められる可能性がある
  • 特定のキャラクター名や作家名をプロンプトに使用することはリスクが高い
  • 米国や日本で訴訟や法改正の議論が進んでおり、今後のルール変更に注意が必要

生成AIは非常に便利なツールですが、著作権リスクを理解せずに使用することは危険です。

本記事で紹介した対策を参考に、安全にAIを活用していただければ幸いです。

AIの技術は日々進化しており、それに伴って法規制や社会の受け止め方も変化しています。

最新の情報をキャッチアップしながら、適切なリスク管理のもとでAIを活用することが、これからの時代に求められています。

業務へのAI導入をお考えの方は、専門家のサポートを受けることで、より安心してAIを活用できるようになります。

株式会社エッコでは、名古屋を拠点にWebコンサルティングを提供しており、AI活用に関するご相談も承っております。

著作権リスクを踏まえた適切なAI導入について、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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