今月より事業部毎にテーマを決めてプレゼンを行う『eセッション』を開催することになりました。
記念すべき第1回目のe-セッションは、「インサイト」についてマーケティング事業部がメンバーでプレゼンを行いました。
好評でしたので、こちらでご紹介したいと思います。
マーケティングや商品を売る上で欠かせない「インサイト」について、
知らない人はぜひ読んでみてください。
目次
「良い商品、良いサービス」であれば、「売れる」と思いますか?
今の時代、世の中に商品が溢れています。
そして、そのほとんどが同じようなクオリティをしており、比較することは難しくなってきています。
他の商品より抜群に「良い」点がなければ、消費者からしたら全て同じようなものでしょう。
「売れている商品」は全て「良い商品」かもしれませんが、
「良い商品」だからといって「売れる」わけではないということです。
ということで、質問の答えは”NO”です。
では、その中で商品、サービスを売るためにはどうすれば良いのでしょうか。
商品を売っていくには
消費者が欲しいもの、
消費者の心理を考えないといけません。
消費者の心理すなわち今回のテーマ「インサイト」です。
『消費者インサイト』を知り、商品アイデア/訴求をすることが大切です。
「インサイト」とは?
辞書でひくと「物事の本質を見抜くこと」と出てきますが、
ビジネス用語、マーケティング用語ではこうです。
「インサイト」
消費者の行動や思惑、
それらの背景にある意識構造を見ぬいたことによって得られる
「購買意欲の核心やツボ」のこと。
消費活動や購買意欲を促す潜在的な欲求のスイッチ。
消費者の心理をついた隠れたスイッチのようなものです。
ネットショッピングをしていると、
「これを購入した人はこのような商品も購入しています」という文章を見て
確かに必要だと「ついで買い」してしまった人も多いのではないでしょうか。
「ニーズ」と「インサイト」の違い
インサイトは、競合他社も知らない隠れた心理だから、競争優位を実現する『アイデアの素』になりますが、
一方、ニーズは消費者自身が明確に認識できている欲求だから、
それを捉えても競争優位を実現するアイデアは生まれません。
例えば、
マクドナルドが消費者アンケートをした、有名なお話があります。
「野菜だけのヘルシー志向のハンバーガーを商品化してほしい」と多くの人が回答したので
マクドナルドは「ヘルシーバーガー」を商品化しました。
しかし、結果は全く売れず大失敗に終わりました。
「ヘルシーなハンバーガー」はハンバーガー業界にはすでに存在し、食べたい人は別のお店で食べますし、
そもそも消費者はマクドナルドに肉々しいものを望んでいるのです。
消費者アンケートによって顕在化したものは「ニーズ」だったというお話です。
「感情を考えるのが超大事」ってこと。
消費者インサイトとは、顧客を動かす隠れた欲求のことです。
つまり、「感情を考えるのが超大事」ってこと。
なので、「なんで買わないのか?」を知りたい時、買わない理由を聞いてはダメ
<聞いてはダメな理由>
①答えてくれるが、明確な理由はまず返ってこない
②なので、その理由から対策を考えても改善に繋がらない
③もっともらしいことを言っているだけで、真の理由なのか怪しい
とある、仕事で忙しいAくんの話
ある日、彼女のBちゃんから、
「友達のCちゃんは彼氏から
ブランドバッグもらったんだって!いいなー」
と自慢されたと言われました。
Aくんは、それなら!と思い、頑張って貯めた貯金で
ブランドバッグを買い、Bちゃんにあげました。
しかし、
Bちゃんの機嫌がよかったのは束の間、
しばらくすると、また機嫌が悪くなってしまいました。
男性の皆さんはこういう話ってわりとよくあると思いますが、
なぜ?だと思いますか?
実は、
Bちゃんが本当に欲しかったのは、ブランドバックではなく
Aくんから「大事にされている」という感情でした。
なので、
Aくんは、Bちゃんが学生時代続けていたテニスを
Bちゃんから習い、一緒にテニスを楽しむ時間を作ったところ、
楽しい毎日を送り続けることができました。
という話。
ここからわかるのが、
「ブランドバッグもらった」という話から、「ブランドバッグ」が欲しいと考えて行動した結果、
Bちゃんの気持ちを考えていなくて、失敗してしまったという話です。
インサイトの視点で考える時は、
「ブランドバッグもらった」という話から、「私のことも大事にして欲しい」という感情を読み取ることが大切です。
消費者インサイトは3つの角度から分類できる
先程のAくんの話は、(3)未充足欲求もしくは、(2)不満だったのかなと思うのですが、
以下の3つのタイプの消費者インサイトがあることを覚えておくと、考えやすいかもです!
(1)価値:ポジティブな心理
(2)不満:ネガティブな心理
(3)未充足欲求:求められているが、まだ充たされていない心理
消費者インサイトを構成する4つの要素
そんな消費者インサイトを考える上で、構成される4つの要素をまとめました。
(1)感情が生まれる背景的な理由(バックグラウンド)
(2)感情が生まれた場面(シーン)
(3)感情、気持ち、情緒(エモーション)
(4)感情を生み出すきっかけとなる直接的な要因(ドライバー)
ワーク:あるお菓子メーカーのインサイトの分析
これは、あるお菓子メーカーのインサイトの分析なのですが、
以下の条件の場合に考えられる商品施策はどんなことがあるでしょう?
(1)受験・恋愛・友人関係で悩みやストレスだらけの毎日を送る中高生
(2)勉強と勉強の合間に一息入れる場面が多い
(3)心がふっと軽くなりストレスから解放されたい
(4)バキッと折る時に感じる感情
そう、KitKatの戦略ですね。
卒業シーズンに合わせた戦略で、バッチコーンいった事例です。
P&G ファブリーズの事例
消臭でお馴染みのファブリーズも消費者のインサイトをもとにマーケティングを行い成功した商品の一つです。
ファブリーズの誕生
ファブリーズの歴史は意外にも長くて1990年代半ばに誕生しています。
アメリカのP&G社は悪臭を根絶する安価で透明な液体を開発し、販売に向けて元ウォール・ストリートの数学者や生活習慣行動の専門家を集めてマーケティングチームを結成しました。
この画期的な製品の成功を確信した彼らは、いくつかの都市でテスト販売とテストCMを実施して消費者の反応を調査してみました。
当初のCM訴求と反響
最初のテレビCMでは、タバコのにおいなど服に付着した悪臭を消すもので、その次のテレビCMでは、ソファやカーペットなどの家具からペットのにおいを消すものでした。
CMの通りこの商品のコンセプトは『日常の嫌なにおいを消すこと』でした。
「日常の嫌なにおいを消す」というわかりやすいメリットでマーケティングチームのメンバーはファブリーズの大ヒットを確信していたようです。
しかし、1週間、1ヶ月、2ヶ月が過ぎてもファブリーズは売れず、むしろ売上はどんどん縮小していきました。
予想外の展開にパニックに陥ったチームは、慌てて消費者を訪問して詳細な調査を実施することになります。
予想していなかった事実の発覚
消費者への訪問調査結果の結果、猫を飼っている家庭の飼い主はもはや猫のにおいが気にならず、家で喫煙する家庭もタバコのにおいが常習化して鈍感になっていることがわかりました。
そう。ファブリーズがコンセプトにしていた「日常の嫌なにおい」は、当事者にとっては気にならないものだったのです。
再調査で見えてきた消費者心理
販売戦略の見直しを迫られたファブリーズのチームは、ハーバード大学の教授を迎え入れ、ファブリーズを日常的に使用する人々の生活を徹底的に調査しました。
その結果、
あるファミリー層の母親が部屋の掃除を終えた後に、ファブリーズを最後の締めくくりとして使用していることが判明しました。
その女性に深く話を聞いてみると、「掃除を終えた後、ご褒美や祝福のような気持ちでスプレーを吹きかける」と語りました。
この女性は、たった2週間でファブリーズ1本を使い切るほどのヘビーユーザーでした。
インサイトを落とし込んだ広告へ
この女性のインサイトをもとに作成された新しいファブリーズのプリント広告は、窓を開けて新鮮な風が吹き込むイメージで表現され、テレビCMも掃除が終わった清潔な部屋や、整えられたベッドにスプレーして香りを楽しむ様子を映し出すものに変更されました。
こうして、ファブリーズは「日常の嫌なにおいを消す」商品から、「掃除の終わりのご褒美」として、また「日常に新鮮な香りを加える」商品へと変わっていったのです。
消費者の心理を掴み売上爆増
生まれ変わったファブリーズは消費者の心理を掴み、わずか2ヶ月で売上を倍増させ、見事なV字回復を果たしました。
1年後には、なんと331億円もの売上を記録しました。
その後も、フレッシュな香りを訴求することに加え、当初の目標であった「日常の嫌なにおい」を取り除きたい層にも広く愛用されるようになりました。この成功を受けて、ファブリーズはさまざまなスピンオフ商品を生み出し、年間1000億円以上の売上を誇るP&Gの主要事業の一つへと成長しています。
これがP&Gの取り組んだインサイトマーケティングの成功事例になります。
任天堂の事例
私はインサイトマーケティングの具体例として任天堂の戦略に焦点を当て、参加者からの洞察を得る形でディスカッションを進めました。
セミナーは、私が任天堂の製品に関する基本的な質問から始めることでスタートしました。「任天堂にはどんなゲームや機種がありますか?」という私の問いに対して、参加者からは任天堂の幅広いゲームラインナップと様々なゲーム機種に関する回答が寄せられました。このセッションを通じて、参加者は任天堂がどのようなターゲット層を意識しているのかについての洞察を共有しました。
その後、私は「ゲームを買う人のニーズは何だと思いますか?」と質問し、ディスカッションを深めました。この質問に対して、参加者は「脳を鍛える大人のDSトレーニング」の例を挙げ、任天堂が如何にして異なるニーズを持つ市場を開拓したかについて議論しました。このソフトウェアは、従来の任天堂のターゲット層とは異なる高齢者層をターゲットにしており、3400万本以上の売上を記録しました。
この事例について深く議論を進める中で、参加者は任天堂が高齢者という新しい顧客層をどのようにして見出し、彼らの隠れたニーズに応えたかについての洞察を示しました。一般にゲームといえば若者のものというイメージが強い中、任天堂はナンプレや将棋のような伝統的なゲーム要素を取り入れることで、高齢者層にも受け入れられる新しいタイプのゲームを提供しました。
このセミナーでは、参加者の洞察を通じて、任天堂の事例がいかにインサイトマーケティングの優れた例であるかが浮き彫りにされました。特に、既存の市場の枠を超えて新しい顧客層を発見し、そのニーズに対応することの重要性が強調されました。このディスカッションは、インサイトマーケティングの実践において、潜在的な顧客ニーズの発見とそれに応える戦略がいかに重要かを示す貴重な事例となりました。
大戸屋の事例
インサイトマーケティングのもう一つの事例として、定食チェーン「大戸屋」の戦略に焦点を当てました。この部分では、私が事例を提示し、参加者からの思考と洞察を引き出す形で進行しました。
まず、私は参加者に「大戸屋を知っていますか?」と尋ね、ディスカッションを開始しました。この質問の後、私は「一人で外食するのが苦手」というよりも、「一人で店に入るところを見られたくない」というインサイトに基づいて、大戸屋の経営陣がどのような作戦を立てたかを問いかけました。
参加者にはグループシンキングタイムを設け、この戦略について考えてもらいました。その後、私は正解を明かしました。大戸屋の戦略は、地下や2階以上の位置に店舗を置くことでした。通常、地下や高層階の店舗は集客力が弱いとされていますが、大戸屋はこの弱点を逆手に取りました。特に1人で食事をする女性客をターゲットにしている店舗では、地下や2階以上に位置することで目立たず、客が入店しやすい環境を作り出しました。
この事例を通じて、参加者は大戸屋がどのように顧客の潜在的な心理的障壁を理解し、それに対応するために独自の店舗配置戦略を採用したかについて議論しました。特に、一人で外食することに対する社会的な不安や恥ずかしさを感じる顧客層のニーズに応えることで、大戸屋は独自の顧客基盤を構築しました。
このセミナーのディスカッションは、大戸屋の事例がいかにインサイトマーケティングの効果的な実践例であるかを示すものでした。一見すると不利に思える店舗の位置を、顧客の心理的ニーズに応えるための戦略的な選択として活用することの重要性が強調されました。この事例は、市場における潜在的な顧客ニーズの発見とそれに応じた独自の戦略が、ビジネスの成功にどれだけ貢献するかを示す貴重な教訓となりました。
まとめ
記念すべき第一回のeセッションはインサイトについてプレゼンしました。
顧客の隠れた欲求にコミットしたマーケティング的思考ができるように、日々勉強が必要だと感じました!
今後も、最新のマーケティング情報にアンテナを張っていきたいです⤴︎