「生成AIでつくった画像をSNSに投稿したら、クリエイターから警告が届いた」 「社内資料にAIで生成した文章を使ったところ、競合他社の記事と酷似していると指摘された」

こうしたトラブルは、もはや他人事ではありません。 ChatGPTやStable Diffusionをはじめとする生成AIの普及にともない、著作権をめぐる問題が急増しています。 とくに注意すべきなのは、万が一の著作権侵害で責任を問われるのは、AIの開発会社ではなく「生成物を利用した企業や担当者自身」であるという事実です。

「どこまでがセーフで、どこからがアウトなのか」という判断基準が分からないまま、生成AIを業務に使い続けることは大きなリスクをはらんでいます。

本記事では、文化庁の公式見解や著作権法の規定をもとに、生成AIと著作権の関係を「学習段階」「生成・利用段階」「AI生成物の著作物性」の3つの切り口で徹底解説します。 さらに、企業が明日から実践できる具体的な対策もあわせてお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。

生成AIと著作権の基本的な関係を理解しよう

生成AIの著作権問題を正しくとらえるには、まず前提となる法律の基礎知識をおさえておく必要があります。 「著作物とは何か」「どの段階で著作権が関わるのか」「国としてどのような見解を示しているのか」の3点を理解するだけで、トラブルを避けるための判断力が格段に高まります。

このセクションでは、著作権法の基本から文化庁の最新見解まで、生成AIと著作権の全体像をわかりやすく整理します。

  • 著作権法における「著作物」の定義
  • 生成AIが著作権に関わる2つの段階
  • 文化庁の公式見解のポイント

著作権法における「著作物」の定義とは

著作権の問題を考えるうえで、最初に理解しておきたいのが「著作物」の定義です。 著作権法第2条第1項第1号では、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定めています。

この定義には、いくつかの重要なポイントがふくまれています。 まず、「思想又は感情」を表現したものでなければなりません。 つまり、単なるデータや事実の羅列は著作物にはあたらないのです。 たとえば、電話帳に並ぶ番号の一覧や、気温の観測データそのものには著作権は発生しません。

次に、「創作的に表現した」という要件があります。 ありふれた表現やだれが書いても同じになるような文章は、創作性が認められにくいとされています。 逆に、書き手の個性や工夫が反映された文章・イラスト・音楽などは、著作物として保護の対象となります。

著作権法が保護する著作物の代表的なカテゴリを以下にまとめます。

カテゴリ 具体例
言語の著作物 小説、論文、ブログ記事、脚本など
音楽の著作物 楽曲、歌詞など
美術の著作物 絵画、イラスト、彫刻など
映画の著作物 劇場映画、アニメ、動画コンテンツなど
写真の著作物 風景写真、ポートレートなど
プログラムの著作物 ソフトウェアのソースコードなど

ここで押さえておきたいのは、著作権は作品を創作した時点で自動的に発生するという点です。 特許や商標のように出願・登録の手続きは一切不要であり、ブログに書いた文章も、スマートフォンで撮影した写真も、創作性があれば著作物として保護されます。

一方で、アイデアや作風、画風といった抽象的な要素は著作権の保護対象外です。 たとえば「実験用動物が人間を手術するストーリー」というアイデア自体は保護されませんが、そのアイデアを具体的に表現した小説の文章は保護されます。 この「アイデアと表現の区別」は、生成AIの著作権問題を考えるうえでも非常に重要な判断基準となります。

生成AIが著作権に関わる2つの段階(学習と生成)

生成AIと著作権の関係を正しく理解するためには、「学習段階」と「生成・利用段階」の2つに分けて考えることが欠かせません。 それぞれの段階で適用される法律のルールがまったく異なるためです。

第1段階は「AI学習(開発)段階」です。 この段階では、AIの開発者がインターネット上の文章や画像、音楽データなどを大量に収集し、学習用データセットを作成します。 そのデータをもとにAIモデルを訓練し、パターンや特徴を学ばせるプロセスが行われます。 この段階では、著作権法第30条の4にもとづく「非享受目的の利用」という例外規定が重要な役割を果たします。

第2段階は「生成・利用段階」です。 この段階では、わたしたちユーザーがAIにプロンプト(指示文)を入力し、文章や画像などのコンテンツを生成します。 そして、その生成物を公開したり、商品として販売したり、ビジネスに活用したりする行為が著作権の問題となります。 この段階では、通常の著作権侵害と同じ判断基準が適用されるため、既存の著作物との類似性や依拠性が問われることになります。

段階 主な行為 適用される主なルール
学習段階 データ収集、学習用データセット作成、モデル訓練 著作権法第30条の4(非享受目的の利用)
生成・利用段階 プロンプト入力、コンテンツ生成、公開・販売 通常の著作権侵害と同じ判断基準(類似性・依拠性)

この2段階の整理は、文化庁をはじめ多くの専門家が推奨する考え方です。 「AIが学習すること自体は違法なのか」と「AI生成物を使うことは違法なのか」を混同してしまうと、正しいリスク判断ができなくなります。 まずはこの2つの段階を明確に区別することが、生成AIの著作権問題を理解するための第一歩です。

文化庁が示す「AIと著作権に関する考え方」の要点

生成AIと著作権の関係について、日本政府として公式な見解を示しているのが文化庁です。 2024年3月15日に文化審議会著作権分科会法制度小委員会が取りまとめた「AIと著作権に関する考え方について」は、現時点で最も重要な参考資料のひとつです。

この文書は、AIと著作権に関する判例や裁判例の蓄積がまだ十分でない現状をふまえて、著作権法の専門家による審議会が一定の考え方を整理したものです。 法的拘束力はないものの、今後の裁判や実務において大きな影響力をもつ指針として位置づけられています。

「AIと著作権に関する考え方について」の主要なポイントは、以下のとおりです。

  • AI学習段階では著作権法第30条の4が適用され、原則として著作権者の許諾なく著作物を利用できる
  • ただし「著作権者の利益を不当に害する場合」には例外的に違法となりうる
  • 生成・利用段階では、通常の著作権侵害と同じ判断基準(類似性・依拠性)が適用される
  • AI生成物が著作物となるかどうかは、人間の「創作意図」と「創作的寄与」の有無で判断する
  • 著作権侵害の責任は、原則としてAI開発者ではなくAI利用者が負う

とくに企業にとって重要なのは、最後のポイントです。 「AIが勝手につくったものだから自社に責任はない」という主張は通用しません。 生成物を業務で使用した企業や担当者が、著作権侵害の責任を直接負う可能性があるのです。

また、文化庁は2024年7月に「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」も公表しています。 こちらはより実務的な内容となっており、AI利用者が自身の行為が適法かどうかを確認するための手引きとして活用できます。 生成AIを業務で活用する企業は、これらの資料に一度目を通しておくことを強くおすすめします。

AI学習段階における著作権の取り扱い

生成AIの開発には、インターネット上の膨大なデータを学習させるプロセスが不可欠です。 この学習段階では、他者の著作物であるテキストや画像が大量に使われます。 「他人の著作物を勝手に使って学習させるのは違法ではないのか」という疑問は、多くの方が抱くところでしょう。

結論からいえば、日本の著作権法では、AI学習のための著作物利用は原則として適法とされています。 ただし、すべてのケースで許されるわけではなく、一定の条件のもとで違法となる場合もあります。 ここでは、その法的根拠と例外のケースを詳しく解説します。

項目 内容
原則 AI学習目的の著作物利用は適法
根拠条文 著作権法第30条の4
例外 著作権者の利益を不当に害する場合は違法

著作権法第30条の4が認める非享受目的の利用とは

AI学習における著作物利用の適法性の根拠となっているのが、著作権法第30条の4です。 この条文は2018年(平成30年)の著作権法改正で新設されたもので、デジタル化・ネットワーク化の進展に対応するために整備されました。

第30条の4は、「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」については、原則として著作権者の許諾なく著作物を利用できると定めています。 ここでいう「享受」とは、著作物を見たり読んだり聴いたりして、その表現を楽しむことを指します。

AIの学習プロセスでは、人間のように作品を鑑賞して感動するわけではありません。 AIはデータのパターンや統計的な特徴を抽出しているだけであり、作品の思想や感情を「享受」しているとはいえません。 このため、AI学習は「非享受目的の利用」にあたり、著作権法第30条の4の適用を受けるというのが現在の通説的な解釈です。

この規定のおかげで、AI開発企業はWeb上の膨大なテキストや画像データを学習に利用でき、日本におけるAI技術の発展が促進されてきました。 国際的にみても、日本の著作権法はAI開発にとって比較的柔軟な枠組みを提供しているとされています。

ただし、この規定には重要な「ただし書き」があります。 「著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」というものです。 つまり、非享受目的であっても、著作権者の経済的利益を不当に損なうような利用は違法となる可能性があります。

  • 第30条の4の適用条件:著作物の享受を目的としない利用であること
  • 適用される場面の例:AI開発のための情報解析、技術検証のためのリバースエンジニアリングなど
  • 適用されない例外:著作権者の利益を不当に害する場合

学習利用が違法となるケースと判断基準

AI学習目的の著作物利用が原則として適法であるとはいえ、あらゆるケースで無制限に許されるわけではありません。 著作権法第30条の4のただし書きに該当する場合、つまり「著作権者の利益を不当に害する場合」には違法と判断される可能性があります。

この「不当に害する」かどうかの判断は、文化庁の考え方によれば、主に2つの観点から行われます。 ひとつは「著作権者の著作物の利用市場と衝突するか」という観点です。 もうひとつは「将来における著作物の潜在的販路を阻害するか」という観点です。

これらの判断にあたっては、技術の進展や著作物の利用態様の変化を考慮することが必要とされています。 以下では、違法となりうる代表的なケースを具体的にみていきましょう。

判断の観点 内容
利用市場との衝突 著作権者が本来得られるはずの収益機会を奪っていないか
潜在的販路の阻害 将来的に著作物が販売・利用される可能性のある市場を妨げていないか

著作権者の利益を不当に害する場合の具体例

著作権者の利益を不当に害すると判断されうるケースには、いくつかの典型的なパターンがあります。

もっとも分かりやすい例は、有料で販売されている著作物を無断で大量にコピーし、AI学習用のデータベースとして構築するケースです。 たとえば、イラストレーターが有料で販売しているイラスト素材集を「AI学習用」と称して無断でまるごとコピーし、データベース化する行為は、著作権者の販売市場を直接的に侵害するものといえます。

また、特定のクリエイターの作品を集中的に学習させて、そのクリエイターの作風を再現するAIモデルを構築する行為も問題視されています。 このようなAIモデルは、結果としてそのクリエイターの作品市場を代替するおそれがあるためです。

さらに、学習データの利用にあたって、著作権者がすでに利用条件を明示しているケースも注意が必要です。 Webサイトの「robots.txt」でAIクローラのアクセスを拒否しているのに、それを無視してデータを収集する行為は、著作権者の意思に反する利用として問題となりえます。

  • 有料の著作物を無断で大量にコピーしてデータベース化する行為
  • 特定クリエイターの作品を集中学習させ、その作風を再現するモデルをつくる行為
  • robots.txtによるAIクローラ拒否を無視してデータを収集する行為
  • 情報解析用に販売されているデータベースの著作物を、購入せずに複製して利用する行為

海賊版サイトからのデータ収集の違法性

AI学習においてとくに問題視されているのが、海賊版サイトからデータを収集して学習に利用する行為です。

海賊版サイトとは、著作権者の許諾を得ずに著作物を無断でアップロード・公開しているWebサイトのことです。 こうしたサイトに掲載されているデータは、そもそも違法にアップロードされたものですから、そこからデータを収集して学習に使う行為は、著作権者の利益を不当に害する可能性がきわめて高いとされています。

文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」でも、「海賊版等の権利侵害複製物が掲載されているウェブサイトから、当該複製物である著作物をAI学習のために複製する行為」について言及されています。 このような行為は、海賊版サイトであることを知りながらデータ収集を行った場合、著作権法第30条の4のただし書きに該当し、違法と判断される可能性が高いのです。

企業がAIツールを選定する際には、そのツールの開発元がどのようなデータソースから学習データを収集しているかを確認することが重要です。 学習データの出所が不透明なAIツールを使用した場合、意図せず違法なデータにもとづく生成物を業務に使ってしまうリスクがあります。

  • 海賊版サイトからのデータ収集はただし書きに該当し違法となる可能性が高い
  • 「知りながら」収集した場合にはとくにリスクが大きい
  • AIツール選定時に学習データの出所を確認することが重要

AI生成物の利用段階で問われる著作権侵害

生成AIで作成したコンテンツを実際にビジネスで利用する段階では、通常の著作権侵害と同じ基準で判断されます。 つまり、人間がつくった作品であってもAIがつくった作品であっても、既存の著作物の権利を侵害しているかどうかの判断基準は同じです。

企業のWeb担当者やマーケティング担当者にとって、この段階でのリスク管理がもっとも重要といえるでしょう。 ここでは、著作権侵害の具体的な判断基準と、実務で注意すべきポイントについて解説します。

リスクが高い行為 リスクが低い行為
既存作品に酷似した生成物をそのまま公開 生成物を参考に大幅に加筆・修正して使用
特定の作家名を指定してプロンプトを入力 抽象的なスタイル指示にとどめる
チェックなしで商用利用 類似作品の有無を事前に調査して使用

著作権侵害の2要件「類似性」と「依拠性」

AI生成物による著作権侵害が成立するためには、「類似性」と「依拠性」の2つの要件をともに満たす必要があります。 どちらか一方だけでは著作権侵害は成立しません。

まず「類似性」とは、AI生成物が既存の著作物と表現レベルで似ていることを指します。 具体的には、既存の著作物がもつ「表現上の本質的な特徴」を、生成物を見た人が直接感じ取れるかどうかで判断されます。 たとえば、あるイラストレーターの作品と構図・色使い・キャラクターの表情まで酷似している場合は、類似性が認められる可能性が高いでしょう。

一方で、単に「雰囲気が似ている」「ジャンルが同じ」という程度では、類似性は認められません。 あくまでも具体的な表現の本質的特徴が共通しているかどうかがポイントです。

次に「依拠性」とは、既存の著作物にもとづいて(参考にして)作品がつくられたことを指します。 まったく知らない作品と偶然似てしまった場合には、依拠性は認められず、著作権侵害にはなりません。

生成AIの場合、この依拠性の判断がとくに難しいとされています。 なぜなら、AIの学習データにどのような著作物がふくまれているかをユーザーが把握するのは困難であり、ユーザー自身が知らない著作物にもとづいた生成物が出力される可能性があるためです。

文化庁の「考え方」では、AIが学習段階で既存の著作物を取り込んでいる以上、一定の場合には依拠性が推認されうるとの見解が示されています。

  • 類似性:既存の著作物の表現上の本質的特徴を直接感じ取れるか
  • 依拠性:既存の著作物を参考にして(もとにして)つくられたか
  • 両方の要件を満たした場合にのみ著作権侵害が成立する

画風・作風の類似はどこまで許されるか

「AIでつくった絵が有名イラストレーターの画風に似ている」という場合、著作権侵害になるのでしょうか。 この点は、多くの方が気になるポイントかと思います。

結論からいうと、画風や作風そのものは著作権の保護対象ではありません。 著作権法が保護するのは具体的な「表現」であり、その表現の背後にある「アイデア」「スタイル」「画風」は保護の対象外です。

たとえば、「水彩画風の淡い色合い」「アメリカンコミック風の力強い線」といったスタイルの特徴は、だれでも自由に採用することができます。 これを著作権で独占できるとすると、後続のクリエイターの創作活動が著しく制限されてしまうためです。

しかし、画風の類似が許されるからといって、何でも自由というわけではありません。 画風を超えて、特定の作品の具体的な構図やキャラクターデザイン、配色パターンまで再現してしまっている場合は、「表現」レベルでの類似と判断される可能性があります。

実務上の判断基準をまとめると、以下のようになります。

類似の程度 著作権侵害の可能性
画風・作風が似ている程度 原則として侵害にならない
具体的な構図・キャラクターデザインが似ている 侵害と判断される可能性がある
特定の作品とほぼ同一の表現が再現されている 侵害と判断される可能性が高い

企業としては、「画風の類似は問題ない」と安心するのではなく、生成物が特定の著作物の具体的な表現を再現していないかを慎重にチェックすることが求められます。

「〇〇風」のプロンプト指定に潜むリスク

画像生成AIを使う際に、「〇〇(特定の作家名)風のイラストを描いて」というプロンプトを入力する方は少なくないでしょう。 しかし、このような特定の作家名やキャラクター名を指定するプロンプトには、著作権侵害のリスクが潜んでいます。

特定の作家名を指定してAIに画像を生成させた場合、AIがその作家の作品を集中的に参照し、結果として既存作品に酷似した画像を出力する可能性が高まります。 このとき、「類似性」と「依拠性」の両方が認められやすくなるため、著作権侵害が成立するリスクが大きくなるのです。

また、文化庁の「考え方」では、AI利用者がプロンプトに特定の作家名やキャラクター名を入力した場合、その結果生成された画像については依拠性が推認されやすいとの見解が示されています。 「AIが勝手にやったこと」という言い訳は通用しない可能性が高いわけです。

さらに、著作権侵害だけでなく、有名キャラクターやブランドロゴに似た画像を生成してしまった場合には、商標権侵害やパブリシティ権侵害のリスクも生じます。

実務において安全にプロンプトを設計するためのポイントは、以下のとおりです。

  • 特定の作家名・キャラクター名・ブランド名をプロンプトに含めない
  • 「水彩画風」「フラットデザイン」など抽象的なスタイル指示にとどめる
  • 生成された画像が特定の著作物に酷似していないかを必ず目視で確認する
  • 社内のプロンプト運用ガイドラインにNG表現のリストを設ける

Webサイトの制作やコンテンツマーケティングにおいて生成AIを活用する企業は、プロンプト設計のルールを社内で統一しておくことが重要です。 株式会社エッコのようなWebコンサルティング会社に相談すれば、著作権リスクを考慮したコンテンツ制作の体制づくりについてもアドバイスを受けることができます。

AI生成物に著作権は発生するのか

「AIを使ってつくったコンテンツは、自社の著作物として保護されるのか」 これは、生成AIをビジネスに活用する企業にとって、非常に関心の高いテーマです。

もしAI生成物に著作権が認められなければ、そのコンテンツはだれでも自由にコピー・転用できることになり、企業が独自のコンテンツとして活用するメリットが大幅に失われてしまいます。 ここでは、AI生成物の著作物性をめぐる現在の法的な考え方を整理します。

  • AI生成物が著作物として認められるための条件
  • プロンプトの詳細さと著作権の関係
  • 海外の判例から学べるポイント

著作物と認められるための「創作意図」と「創作的寄与」

AI生成物が著作物として保護されるかどうかは、人間による「創作意図」と「創作的寄与」の2つの要素で判断されます。 文化庁の「考え方」でも、この2つが著作物性の判断において重要であるとされています。

「創作意図」とは、人間が自らの思想や感情を文章や絵、音楽などのかたちで表現しようとする意思のことです。 つまり、「こういう作品をつくりたい」という明確な目的をもってAIを利用している場合に、創作意図が認められます。

「創作的寄与」とは、完成した作品に人間の創意工夫が反映されていることを指します。 AIの出力をそのまま使うだけではなく、人間がアイデアを練り、何度も修正を重ね、最終的な表現に主体的に関与している場合に、創作的寄与が認められるのです。

要素 意味 具体例
創作意図 著作物を創作しようとする意思 「企業のブランドイメージに合うイラストをつくりたい」という目的意識
創作的寄与 人間の創意工夫が作品に反映されていること 何度もプロンプトを調整し、出力結果を選別・編集する過程

重要なのは、単にAIに指示を与えて自動生成されたものは著作物とは認められないという点です。 たとえば、「美しい風景画を描いて」とだけ入力してAIが出力した画像には、人間の創作的寄与が認められにくく、著作権は発生しないと考えられます。

逆に、人間がAIを「道具」として使い、構図の指定・色合いの調整・複数の出力結果の組み合わせなど、具体的かつ主体的に創作過程に関与した場合には、その人間が著作者として認められる可能性があります。

プロンプトの詳細さと著作権成立の関係

「詳細なプロンプトを入力すれば、著作権が認められやすくなるのではないか」と考える方もいるかもしれません。 実際のところ、プロンプトの内容と著作権成立の関係は、そう単純ではありません。

文化庁の「考え方」では、「AI生成物を生成するにあたって、創作的表現といえるものを具体的に示す詳細な指示は、創作的寄与があると評価される可能性を高める」との見解が示されています。 つまり、詳細なプロンプトは著作権成立にとってプラスの要素にはなりうるのです。

しかし同時に、「長大な指示であったとしても、創作的表現に至らないアイデアを示すにとどまる指示は、創作的寄与の判断に影響しない」とも明記されています。 プロンプトがいくら長くても、それが「赤い服を着た女性」「山の上にある城」といったアイデアレベルの指示にすぎなければ、著作権の成立にはつながりません。

著作権が認められるためには、プロンプトの長さよりも、出力結果に人間の具体的な表現意図がどれだけ反映されているかが重要です。

  • プロンプトの長さだけでは著作権は成立しない
  • 創作的表現を具体的に示す詳細な指示は、創作的寄与と評価されうる
  • アイデアレベルの指示は、いくら詳細でも創作的寄与にはあたらない
  • 出力結果の選別・編集・組み合わせなど、プロンプト以外の関与も重要

米国著作権局の判例に学ぶ海外動向

AI生成物の著作物性については、海外でもさまざまな判断が示されており、日本の議論にも大きな影響を与えています。 とくに注目すべきは、米国著作権局の判断です。

2023年、米国著作権局は、画像生成AI「Midjourney」で生成された「Theatre D’opera Spatial」という作品について、著作権登録を認めないとの判断を下しました。 この作品はAIアートコンテストで優勝したことで話題となりましたが、著作権局は人間による創作性が十分に反映されていないとして、著作権保護の対象外と判断したのです。

一方で、同じく2023年に注目を集めた「Zarya of the Dawn」というAI生成画像をふくむグラフィックノベルについては、興味深い判断が示されました。 米国著作権局は、AI生成画像そのものには著作権を認めなかったものの、人間が行ったストーリー構成やページレイアウトには著作権を認めるという部分的な判断を下しています。

これらの判例から読み取れる国際的な傾向は、以下のとおりです。

判例 AI生成物への著作権 人間の関与部分への著作権
Theatre D’opera Spatial 認められず
Zarya of the Dawn 認められず ストーリー構成等は認められた

また、EUではAI規制法案が進行しており、生成AIの利用者に対して**「学習データの開示」や「生成物の透明性」**を求める方向性が示されています。 日本企業がグローバルにコンテンツを展開する際には、各国の法制度の違いにも注意が必要です。

こうした海外動向は日本の今後の法整備にも影響を与えるとみられており、最新の情報を継続的にウォッチしておくことが求められます。

企業が生成AIを安全に使うための実践的対策

ここまで解説してきた法的な知識をふまえて、企業が実際に生成AIを安全に活用するために何をすべきかを具体的にみていきましょう。 著作権リスクを「知っている」だけでは不十分であり、リスクを回避するための仕組みを社内に構築することが不可欠です。

とくにWebコンテンツの制作やデジタルマーケティングの現場では、生成AIの活用頻度が急速に高まっています。 組織的な対策を講じることで、トラブルを未然に防ぎながらAIのメリットを最大限に享受できます。

対策の領域 主な取り組み
ルール整備 社内ガイドラインの策定
品質管理 生成物の事前チェック体制
契約管理 利用規約とライセンスの確認
リスク管理 トラブル発生時への備え

社内ガイドライン策定のポイント

生成AIの著作権リスクを組織的に管理するためには、社内ガイドラインの策定が最優先で取り組むべき対策です。 ガイドラインがない状態では、各担当者の判断にばらつきが生じ、意図せず著作権を侵害してしまうリスクが高まります。

社内ガイドラインに盛り込むべき主な項目は、以下のとおりです。

  • 利用を許可する生成AIツールの一覧と選定基準
  • プロンプト入力時のNGルール(特定の作家名・キャラクター名の入力禁止など)
  • 生成物の利用範囲(社内資料のみ、商用利用可など)
  • 公開前のチェックフロー(だれが、どのような基準で確認するか)
  • 機密情報や個人情報をAIに入力しないことの注意喚起
  • トラブル発生時のエスカレーションルート

ガイドラインは作成して終わりではなく、定期的に見直しと更新を行うことも重要です。 生成AIの技術や法制度は急速に変化しているため、半年から1年に一度は内容を見直すことをおすすめします。

また、ガイドラインの策定にあたっては、社内だけで完結させるのではなく、著作権に詳しい弁護士やWebコンサルティング会社の知見を活用することも有効です。 名古屋を拠点とするWebコンサルティング会社の株式会社エッコでは、企業のWebコンテンツ戦略を総合的にサポートしており、生成AIの活用を見すえた体制づくりについても相談が可能です。

生成物の事前チェック体制の構築方法

社内ガイドラインを策定したら、次に必要なのが生成物を公開・利用する前にチェックする体制の構築です。 AI生成物をたたき台として活用し、人間の目でしっかり確認・編集するプロセスを設けることが、著作権リスクの低減に直結します。

チェック体制を構築する際には、以下のステップをふむとよいでしょう。

ステップ 内容 担当者の例
1. 生成 プロンプトに沿ってAIがコンテンツを生成 コンテンツ担当者
2. 一次チェック 既存著作物との類似がないか目視で確認 コンテンツ担当者
3. 類似検索 画像検索や文章一致率チェックツールで調査 品質管理担当者
4. 編集・加工 人間の手で大幅に加筆・修正を加える コンテンツ担当者
5. 最終承認 上長またはリーガルチームが最終確認 管理職・法務担当

とくに重要なのは、ステップ3の「類似検索」です。 画像であればGoogle画像検索やTinEyeなどのリバースサーチツールを使って、類似画像がないか調べることができます。 文章であれば、コピペチェックツールを活用して既存コンテンツとの一致率を確認できます。

また、AI生成物をそのまま「完成品」として使用するのではなく、必ず「たたき台」として扱うという意識を組織全体で共有することが大切です。 人間が主体的に編集・加工を加えることで、著作権侵害のリスクを下げると同時に、コンテンツの品質も向上させることができます。

利用規約とライセンスの確認フロー

生成AIサービスごとに、生成物の著作権や利用範囲の扱いは大きく異なります。 「どのAIツールを使うか」によって、生成物の権利関係が変わってくるのです。

たとえば、ChatGPTを提供するOpenAIの利用規約では、ユーザーが生成したコンテンツの権利はユーザーに帰属すると定められています。 一方で、別のAIサービスでは商用利用に制限があったり、生成物の権利がサービス提供者に帰属する場合もあります。

利用規約の確認で押さえておくべきポイントは、以下のとおりです。

  • 生成物の著作権・知的財産権の帰属先はだれか
  • 商用利用が明確に許可されているか
  • 生成物の二次利用(印刷・他媒体での使用など)に制限はないか
  • 入力したプロンプトや添付データがAIの学習に使用されるか
  • 著作権侵害が発生した場合の免責条項はどうなっているか

利用規約は改訂されることがあるため、定期的にチェックする仕組みを社内に設けておくことが望ましいでしょう。 たとえば、四半期に一度、利用中のAIサービスの利用規約を確認する担当者を決めておくと安心です。

とくに複数のAIツールを併用している企業では、ツールごとに利用条件が異なるため、一覧表にまとめて管理することをおすすめします。

万が一の著作権トラブルへの備え

どれだけ予防策を講じても、著作権トラブルのリスクを完全にゼロにすることはできません。 そのため、トラブルが発生した場合に備えた体制を事前に整えておくことが重要です。

まず、AI生成物の制作過程を記録として残しておくことが不可欠です。 「どのAIツールを使ったか」「どのようなプロンプトを入力したか」「いつ生成したか」「だれが編集・承認したか」といった情報をログとして保存しておけば、万が一の際に適法性を説明するための証拠となります。

次に、著作権トラブルが発生した場合のエスカレーションフローを明確にしておきましょう。

段階 対応内容
初期対応 該当コンテンツの公開を一時停止し、事実関係を確認
社内報告 上長および法務担当に報告し、対応方針を協議
専門家相談 著作権に詳しい弁護士に相談し、法的リスクを評価
対外対応 権利者への回答、必要に応じた謝罪・是正措置
再発防止 原因分析を行い、ガイドライン・チェック体制を改善

また、著作権侵害に対応できる弁護士や法律事務所を、トラブルが起きる前にリストアップしておくことも有効です。 実際に訴訟や損害賠償請求に発展した場合、著作権侵害の罰則は10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金(法人は3億円以下の罰金)と非常に重いため、迅速な対応が求められます。

生成AIを活用したWebコンテンツ制作において、著作権リスクへの対策を含めた総合的なサポートを求める場合は、株式会社エッコのようなWebコンサルティングのプロフェッショナルに相談することも選択肢のひとつです。

まとめ

本記事では、生成AIと著作権をめぐる法的ルールを、「学習段階」「生成・利用段階」「AI生成物の著作物性」の3つの観点から解説しました。

最後に、押さえておきたい重要ポイントを改めて整理します。

  • 生成AIと著作権の問題は「学習段階」と「生成・利用段階」の2つに分けて考えることが基本
  • AI学習目的の著作物利用は著作権法第30条の4により原則として適法だが、著作権者の利益を不当に害する場合は違法となる
  • AI生成物の利用段階では、「類似性」と「依拠性」の2要件で著作権侵害が判断される
  • 画風や作風の類似だけでは侵害にならないが、「〇〇風」のプロンプト指定はリスクが高い
  • AI生成物に著作権が認められるには、人間の「創作意図」と「創作的寄与」が必要
  • 企業は社内ガイドラインの策定、チェック体制の構築、利用規約の確認、トラブルへの備えを総合的に進めるべき

生成AIは、正しく活用すれば業務効率を飛躍的に高める強力なツールです。 しかし、著作権に関する正しい知識と適切なリスク管理なしに使い続ければ、思わぬトラブルに発展する可能性があります。

本記事で解説した内容を参考に、自社の生成AI活用体制を見直してみてください。 生成AIの著作権対策をふくむWebコンテンツ戦略の構築にお悩みの場合は、名古屋のWebコンサルティング会社である株式会社エッコにご相談ください。 企業のWeb集客からコンテンツ制作まで、幅広い知見にもとづいた実践的なサポートを提供しています。

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