「顧客がどのようなプロセスで商品を購入するのか分からない」「マーケティング施策を打っても成果につながらない」-このような悩みを抱えていませんか。

顧客の購買行動が複雑化する現代において、カスタマージャーニーマップは顧客理解を深め、効果的なマーケティング戦略を立てるための必須ツールとなっています。

しかし、「作り方が分からない」「作ってみたものの活用できていない」という声も少なくありません。

本記事では、カスタマージャーニーマップの基本から作成手順、具体的な活用法まで、初心者の方でも実践できるように分かりやすく解説します。

名古屋のWebコンサルティング会社である株式会社エッコでも、クライアント企業のマーケティング戦略立案において、このカスタマージャーニーマップを積極的に活用しています。

この記事を最後まで読むことで、自社のビジネスに合ったカスタマージャーニーマップを作成し、マーケティング施策の精度を高めることができるようになります。

カスタマージャーニーマップとは何か

カスタマージャーニーマップの定義と役割

カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスを認知してから購入し、さらに購入後も関係を継続するまでの一連のプロセスを視覚化したものです。

「カスタマージャーニー」における「ジャーニー(Journey)」は「旅」を意味し、顧客が商品購入に至るまでの道のりを旅に例えて表現しています。

このマップは、顧客の行動、思考、感情、企業とのタッチポイント(接点)を時系列に沿って整理し、一枚の図として可視化することで、顧客体験の全体像を俯瞰できるようにするものです。

カスタマージャーニーマップが果たす主な役割は以下の通りです。

役割 内容
顧客理解の深化 顧客の行動や心理状態を詳細に把握できる
課題の可視化 購買プロセスのどこに問題があるかを特定できる
部門間の連携強化 マーケティング、営業、カスタマーサポートなど複数部門で共通認識を持てる
施策の優先順位づけ 限られたリソースをどこに投入すべきか判断できる
顧客体験の設計 理想的な顧客体験を実現するための具体的な施策を立案できる

例えば、アパレルショップであれば、顧客がSNSで商品を知り、ブランドサイトで情報を調べ、店舗で試着し、購入に至り、その後SNSで体験をシェアするといった一連の流れを可視化します。

各ステージで顧客が何を考え、何に悩み、どのような感情を抱いているかを明らかにすることで、最適なタイミングで最適なコミュニケーションを取ることが可能になります。

なぜ今カスタマージャーニーマップが重要なのか

カスタマージャーニーマップが注目される背景には、顧客を取り巻く環境の大きな変化があります。

まず、インターネットやSNSの普及により、顧客との接点(タッチポイント)が劇的に増加しました。

従来は店舗や電話、DMなど限られたチャネルでのコミュニケーションが中心でしたが、現在はWebサイト、SNS、メール、チャットボット、アプリなど多様な接点が存在します。

また、ビジネスモデルの変化も重要な要因です。

従来の売り切り型ビジネスに加えて、サブスクリプション(月額課金制)などの継続型ビジネスモデルが増加しています。

これらのモデルでは、購入時だけでなく購入後の顧客体験も重視され、長期的な関係構築が求められます。

さらに、顧客の購買行動自体も複雑化しています。

スマートフォンの普及により、顧客は店舗にいながらオンラインで価格比較をしたり、口コミをチェックしたりするなど、オンラインとオフラインを自由に行き来するようになりました。

このような状況下では、顧客の態度変容プロセス全体を俯瞰し、各段階で適切な施策を実施する必要があります。

カスタマージャーニーマップは、この複雑化した顧客行動を整理し、戦略的にマーケティングを展開するための羅針盤となるのです。

名古屋でWebマーケティング支援を行う株式会社エッコでも、クライアント企業の顧客理解を深めるために、カスタマージャーニーマップの作成から活用までをサポートしています。

ペルソナとの違い・関係性

カスタマージャーニーマップと並んで重要なマーケティング手法に「ペルソナ」がありますが、両者は異なるものです。

ペルソナとは、自社の商品やサービスを利用する典型的な顧客像を、実在する人物のように具体的に描き出したものです。

年齢、性別、職業、年収、趣味嗜好、価値観、ライフスタイルなどを詳細に設定し、「この人」というイメージを明確にします。

一方、カスタマージャーニーマップは、そのペルソナが商品購入に至るまでの**「行動」と「心理変化」のプロセス**を時系列で可視化したものです。

つまり、ペルソナは「誰」を明確にし、カスタマージャーニーマップは「その人がどのように行動するか」を明らかにするという関係性にあります。

比較項目 ペルソナ カスタマージャーニーマップ
焦点 顧客の属性や特性 顧客の行動プロセス
時間軸 静的(ある時点の状態) 動的(時系列の変化)
表現方法 人物プロフィール形式 図表・マップ形式
主な内容 年齢、職業、価値観、悩みなど 行動、思考、感情、タッチポイントなど
作成目的 ターゲット像の明確化 顧客体験の可視化と施策立案

実務においては、まずペルソナを設定し、そのペルソナを主人公としてカスタマージャーニーマップを作成するという流れが一般的です。

例えば、「30代女性、会社員、美容に関心が高い」というペルソナを設定した後、その人が「どのようなきっかけで商品を知り、どこで情報収集し、何を基準に比較検討し、最終的に何が決め手となって購入するのか」というプロセスをマップ化します。

両者を組み合わせることで、より解像度の高い顧客理解が実現できるのです。

カスタマージャーニーマップの種類と特徴

現状マップと理想マップ

カスタマージャーニーマップには、目的に応じて様々な種類があります。

最も基本的な分類が、**現状マップ(As-Isマップ)と理想マップ(To-Beマップ)**です。

現状マップとは、現在の顧客が実際にたどっている購買プロセスを描写したものです。

顧客インタビューやアンケート、行動データなどを基に、顧客が現在どのように行動し、どこで課題や不満を感じているかを可視化します。

このマップを作成することで、現状の顧客体験における問題点や改善すべき領域を特定できます。

一方、理想マップは、企業が提供したい理想的な顧客体験を描いたものです。

現状マップで明らかになった課題を解決し、顧客にとって最適なジャーニーを実現した状態を可視化します。

この2つのマップのギャップを埋めることが、マーケティング施策の具体的な方向性となります。

マップの種類 目的 主な活用場面
現状マップ(As-Is) 現在の顧客行動と課題の把握 現状分析、問題点の特定、改善領域の洗い出し
理想マップ(To-Be) あるべき顧客体験の設計 施策立案、目標設定、改善後の効果検証

例えば、ECサイトの現状マップで「商品ページから購入ページへの遷移率が低い」という課題が見つかったとします。

理想マップでは、「商品詳細が充実し、口コミが豊富で、サイズ選びのガイドがあり、スムーズに購入できる」という理想の状態を描きます。

そして、このギャップを埋めるために「商品説明の充実」「レビュー機能の強化」「サイズガイドの追加」「購入フローの簡素化」といった具体的な施策を立案するのです。

マクロ型・ミクロ型・シナリオ型の使い分け

カスタマージャーニーマップは、対象とする範囲や粒度によっても分類できます。

マクロ型カスタマージャーニーマップは、認知から購入、さらには購入後のリピートや推奨まで、顧客ライフサイクル全体を俯瞰的に捉えるマップです。

マーケティング戦略全体を検討する際や、どの段階に優先的にリソースを投入すべきか判断する際に活用します。

例えば、「認知段階での流入が少ない」「購入後のリピート率が低い」といった全体的な課題を把握するのに適しています。

ミクロ型カスタマージャーニーマップは、特定のフェーズや特定のタッチポイントに焦点を当てた、より詳細で具体的なマップです。

「Webサイトでの情報収集段階」や「店舗での購入検討段階」など、ある特定のプロセスにおける顧客の行動や感情を細かく分析します。

マクロ型で大まかな課題を特定した後、その部分を深堀りする際に使用します。

シナリオ型カスタマージャーニーマップは、MAツール(マーケティングオートメーションツール)やCMS(コンテンツマネジメントシステム)に実装する顧客育成シナリオを設計するためのマップです。

「問い合わせフォーム送信後、3日以内にお礼メールを送り、1週間後に事例紹介メールを送る」といった具体的なコミュニケーション設計に活用します。

マップの種類 対象範囲 主な用途 作成の粒度
マクロ型 顧客ライフサイクル全体 全体戦略の立案、優先課題の特定 粗い(概要レベル)
ミクロ型 特定フェーズや特定タッチポイント 詳細な課題分析、具体的な改善策の検討 細かい(詳細レベル)
シナリオ型 施策実行レベル MAツールへの実装、コミュニケーション設計 非常に細かい(実装レベル)

株式会社エッコでは、クライアント企業の状況や目的に応じて、これらのマップを使い分けた支援を行っています。

業種別のマップの違い

カスタマージャーニーマップの構造や重視するポイントは、業種によって大きく異なります。

**BtoB(法人向けビジネス)**では、購買プロセスが長く、複数の意思決定者が関与するのが特徴です。

課題認識から情報収集、比較検討、稟議、契約までに数ヶ月から1年以上かかることも珍しくありません。

そのため、「どの部署のどの役職者が、どの段階で意思決定に関わるか」を明確にする必要があります。

また、対面での商談やセミナー、ホワイトペーパーのダウンロードなど、タッチポイントも特徴的です。

BtoC(個人向けビジネス)、特にECや小売では、購買プロセスが比較的短く、感情的な要素が大きく影響します。

SNSでの認知、口コミの影響、衝動買いなど、BtoBとは異なる行動パターンを考慮する必要があります。

店舗とオンラインを行き来するオム二チャネル行動も重要な要素です。

サービス業(旅行、教育、美容など)では、購入前の期待と購入後の実体験の両方が重要です。

サービスは形がないため、顧客が「どのように価値を感じるか」「どのような体験を期待しているか」を丁寧に描く必要があります。

また、口コミやSNSでの評判がその後の集客に大きく影響するため、購入後の体験設計も欠かせません。

業種 購買プロセスの特徴 重視すべきポイント
BtoB 長期間、複数の意思決定者、論理的判断 各意思決定者の関心事、情報提供のタイミング、信頼構築
BtoC(EC・小売) 短期間、個人の判断、感情的要素が大きい SNS・口コミの影響、オムニチャネル行動、衝動買いのきっかけ
サービス業 無形商品、体験重視、期待値管理が重要 期待と実体験のギャップ、感情の変化、口コミ生成のきっかけ

自社の業種特性を理解した上でカスタマージャーニーマップを作成することが、実効性の高いマーケティング施策につながります。

カスタマージャーニーマップの作成手順

ゴールとペルソナの設定

カスタマージャーニーマップ作成の第一歩は、明確なゴールの設定です。

なぜなら、目指すべきゴールによって、マップの構造や時間軸、重視すべきポイントが大きく変わるからです。

ゴールとしてよく設定されるものには、「売上増加」「新規顧客獲得数の向上」「顧客ロイヤルティの向上」「リピート購入率の改善」「顧客満足度の向上」「問い合わせ件数の増加」などがあります。

例えば、「キャンペーンからの会員登録」をゴールとする場合、数時間から数日単位の短期間のジャーニーを描くことになります。

一方、「商品認知からロイヤルカスタマー化」をゴールとする場合は、数ヶ月から数年単位の長期的なジャーニーが必要です。

また、カスタマージャーニーマップは部署間を横断してチームで作成することが多いため、ゴールの認識がメンバー間でズレていると非効率です。

最初に関係者全員でゴールを共有し、合意を得てから作成に着手しましょう。

次に、ペルソナの設定を行います。

カスタマージャーニーマップは、ペルソナごとに作成するのが原則です。

ペルソナは、年齢、性別、職業、年収、家族構成、居住地、趣味嗜好、価値観、情報収集の方法、よく使うSNSなど、具体的に設定します。

ペルソナ設定項目 設定例
基本属性 32歳、女性、会社員(マーケティング部)、年収500万円
ライフスタイル 都市部在住、一人暮らし、平日は仕事中心、週末はカフェ巡りが趣味
価値観・関心事 キャリアアップに意欲的、自己投資を惜しまない、SNSで情報収集
課題・悩み 仕事の効率を上げたい、スキルアップしたいが時間がない
情報収集方法 Instagram、Twitter、Googleで検索、友人の口コミ

既存顧客がいる場合は、実際の顧客データやインタビューを基にペルソナを設定すると、よりリアルな人物像になります。

新規事業の場合でも、想定顧客に近い人へのヒアリングを実施することで、精度を高めることができます。

フレームワークの決定

ゴールとペルソナが決まったら、カスタマージャーニーマップの**フレームワーク(枠組み)**を決定します。

基本的な構造は、横軸に時間の経過(購買フェーズ)、縦軸に分析項目を配置する表形式です。

この枠組みがしっかりしていないと、情報が整理されず、活用しにくいマップになってしまいます。

横軸(購買フェーズ)の設定方法

横軸には、顧客が購入に至るまでの**段階(フェーズ・ステージ)**を配置します。

一般的な購買行動モデルでは、「認知」「興味・関心」「情報収集」「比較検討」「購入」「利用」「評価」「ロイヤルティ」といったフェーズに分けられます。

ただし、これはあくまで一例であり、自社の商品やサービス、設定したゴールに応じて最適なフェーズを設定することが重要です。

例えば、BtoB企業であれば「課題認識」→「情報収集」→「比較検討」→「稟議」→「契約」→「導入」→「活用」→「更新検討」というフェーズが適しているかもしれません。

ECサイトであれば「認知」→「サイト訪問」→「商品閲覧」→「カート追加」→「購入」→「受取・使用」→「レビュー投稿」→「再購入」となるでしょう。

フェーズを設定する際のコツは、顧客のタッチポイントが変わるタイミングで区切ることです。

特に、オンラインとオフラインが切り替わる場面では、顧客の行動や思考が大きく変化するため、別のフェーズとして設定するとよいでしょう。

縦軸(分析項目)の設定方法

縦軸には、各フェーズで分析したい項目を配置します。

基本的な項目は以下の通りです。

分析項目 内容
顧客行動 そのフェーズで顧客が実際に取る行動(例:Googleで検索する、店舗で試着する)
タッチポイント 顧客が企業と接する場所や媒体(例:SNS、Webサイト、店舗、カスタマーサポート)
思考 顧客がそのフェーズで考えていること(例:どこで買えるだろうか、価格は妥当か)
感情 顧客が抱く感情の変化(例:期待、不安、満足、失望)
課題・不満 顧客が感じる問題点や不便さ(例:情報が少ない、比較しにくい)
対応施策 企業が取るべきアクション(例:詳細ページの充実、比較表の提供)

これらの項目は必須ではなく、目的に応じてカスタマイズします。

例えば、「利用デバイス(PC・スマホ)」を追加したり、「検索キーワード」を含めたりすることもあります。

重要なのは、各フェーズでの顧客の状態を多角的に把握し、課題と対策を明確にできる項目を選ぶことです。

株式会社エッコでは、クライアント企業の業種や目的に合わせて、最適なフレームワークの設計をサポートしています。

顧客行動とタッチポイントの洗い出し

フレームワークが決まったら、各フェーズにおける顧客行動とタッチポイントを洗い出していきます。

顧客行動とは、そのフェーズで顧客が実際に取る具体的な行動のことです。

「SNSで商品を見る」「Googleで『商品名 口コミ』と検索する」「店舗に足を運ぶ」「友人に相談する」「比較サイトで価格をチェックする」など、できるだけ具体的に記述します。

タッチポイントとは、顧客が企業や商品と接する接点のことです。

オンラインであれば、自社Webサイト、SNS(Instagram、Twitter、Facebookなど)、メール、広告、検索エンジン、口コミサイト、比較サイトなど。

オフラインであれば、店舗、イベント、セミナー、DM、電話、営業担当者などが該当します。

これらを洗い出す際には、以下の情報源を活用すると効果的です。

情報源 活用方法
顧客インタビュー 実際の顧客に購買プロセスをヒアリングする
アンケート調査 「どこで情報を得たか」「何が決め手になったか」などを質問する
Webアクセス解析 Googleアナリティクスなどでサイト内の行動を分析する
営業担当者へのヒアリング 顧客と直接接している担当者から情報を収集する
SNS・口コミサイトの分析 顧客が実際に投稿している内容を確認する
カスタマーサポートの問い合わせ内容 顧客が疑問に思う点や不満点を把握する

特に注意すべきなのは、企業側が認識していない初期接点です。

例えば、顧客は商品を知る前に、まず「解決したい悩み」を検索していることがあります。

「肌荒れ 改善」と検索していた人が、検索結果に表示された記事で初めて自社の化粧品を知る、といったケースです。

こうした初期段階のタッチポイントを見逃さないようにしましょう。

思考・感情の整理

顧客行動とタッチポイントが洗い出せたら、次に各フェーズでの顧客の思考と感情を整理します。

これがカスタマージャーニーマップの核心部分であり、最も重要なステップです。

思考とは、顧客がそのフェーズで考えていること、頭の中にある疑問や関心事です。

「この商品は本当に効果があるのだろうか」「価格は妥当なのか」「自分に合っているだろうか」「他にもっと良い商品があるのではないか」「購入後のサポートは充実しているか」など、できるだけ顧客の視点で考えます。

感情とは、そのフェーズで顧客が抱く気持ちの変化です。

「期待」「興奮」「不安」「疑問」「迷い」「満足」「失望」「信頼」など、ポジティブなものもネガティブなものも含めて整理します。

感情の変化を折れ線グラフで表現すると、視覚的に分かりやすくなります。

この思考と感情を正確に把握するためには、企業側の希望や憶測ではなく、実際の顧客の声に基づくことが極めて重要です。

把握方法 具体的な手法
定性調査 デプスインタビュー(1対1の深堀りインタビュー)、グループインタビュー
定量調査 Webアンケート、購入後アンケート、NPS(ネットプロモータースコア)調査
行動観察 実際の購買行動を観察する(例:店舗での買い物の様子)
SNS・口コミ分析 TwitterやInstagram、レビューサイトでの顧客の生の声を収集
VOC(Voice of Customer)分析 カスタマーサポートへの問い合わせ内容を分析

例えば、アパレルECサイトの「商品ページ閲覧」フェーズであれば、

思考:「サイズ感はどうだろう」「実物の色味は画像と同じだろうか」「返品できるのか」

感情:「素敵だけど、ネット購入は少し不安」「もう少し情報が欲しい」

といった内容が考えられます。

これらを把握することで、「サイズガイドの充実」「カラーバリエーション画像の追加」「返品ポリシーの明記」といった具体的な改善策が見えてきます。

マップ化と可視化

ここまで整理した情報を、いよいよ一枚の図表にまとめて可視化します。

基本的には、横軸にフェーズ、縦軸に分析項目を配置した表形式で作成します。

ExcelやGoogleスプレッドシートでも作成できますが、Miro、Lucidchart、Canvaなどのビジュアルツールを使うと、より見やすく、チームでの共同編集もしやすくなります。

マップ化する際の工夫として、以下のポイントを押さえましょう。

  • 感情の変化をグラフで表現する:各フェーズでの感情をプラス・マイナスで評価し、折れ線グラフで表現すると、どこで顧客が不満を感じているかが一目で分かります。
  • 色分けやアイコンを活用する:ポジティブな感情は青や緑、ネガティブな感情は赤やオレンジなど、色で区別すると視認性が高まります。タッチポイントも、オンラインはPC・スマホのアイコン、オフラインは店舗のアイコンなどで表現できます。
  • 写真や画像を追加する:実際の画面キャプチャや店舗の写真を加えると、より具体的でイメージしやすいマップになります。
  • 優先度を明示する:課題に対して、重要度や緊急度を★マークや色の濃淡で表現すると、どこから手を付けるべきか判断しやすくなります。

重要なのは、マップを見た人が誰でも顧客の行動と心理を理解できるようにすることです。

過度に複雑にする必要はありませんが、必要な情報は漏れなく記載し、関係者全員で共有できる状態にしましょう。

KPI設定と施策の立案

カスタマージャーニーマップが完成したら、最後に各フェーズのKPI(重要業績評価指標)を設定します。

KPIを設定しないと、マップを作っただけで終わってしまい、施策の効果を測定できません。

KPIは、各フェーズのゴールに対する中間指標として設定します。

フェーズ KPI例
認知 Webサイトへの訪問者数、SNSのフォロワー数、広告のインプレッション数
興味・関心 ページビュー数、滞在時間、資料ダウンロード数
比較検討 商品詳細ページの閲覧数、比較ページの閲覧数、問い合わせ数
購入 コンバージョン率、購入数、客単価
利用・評価 リピート購入率、継続利用率、NPS

これらのKPIを定期的に計測し、目標値と実績値を比較することで、カスタマージャーニーマップが想定通りに機能しているか検証できます。

そして、マップで明らかになった課題に対して、具体的な施策を立案します。

例えば、「情報収集フェーズで離脱率が高い」という課題があれば、「コンテンツの充実」「FAQの追加」「チャットボットの導入」といった施策が考えられます。

「比較検討フェーズで他社に流れてしまう」という課題があれば、「自社の強みを明確にした比較表の作成」「お客様の声の充実」「限定オファーの提示」などが有効です。

施策を実施した後は、再度KPIを確認し、効果を検証します。

PDCAサイクルを回しながら、継続的に改善していくことが、カスタマージャーニーマップを活かす鍵となります。

カスタマージャーニーマップの具体例

BtoB企業の事例

BtoB企業のカスタマージャーニーマップは、購買プロセスが長く、複数の意思決定者が関与する特徴があります。

ここでは、中小企業向けのクラウド会計ソフトを提供する企業の事例を見てみましょう。

ペルソナは、「従業員30名の製造業の経理担当者、40代男性、経理業務の効率化に悩んでいる」と設定します。

フェーズ 顧客行動 タッチポイント 思考 感情 課題 対応施策
課題認識 手作業の経理業務に限界を感じる、効率化の方法を検討し始める 同業他社との情報交換、業界セミナー 「もっと効率的な方法はないか」「他社はどうしているのか」 焦り、不安 具体的な解決策が分からない 業界特化型のお役立ちコンテンツ提供、セミナー開催
情報収集 Googleで「会計ソフト 中小企業」と検索、比較サイトを閲覧 検索エンジン、比較サイト、自社Webサイト 「どんな製品があるのか」「価格は」「機能は」 期待、興味 情報が多すぎて選べない SEOコンテンツ充実、機能比較表の提供、無料資料ダウンロード
比較検討 複数社の資料を請求、デモを視聴、上司に相談 資料、デモ動画、営業担当との商談、Webセミナー 「自社に合っているか」「導入コストは妥当か」「サポートは充実しているか」 慎重、迷い 決裁者を説得する材料が必要 導入事例の提供、ROI試算ツール、無料トライアル
稟議・承認 社内で提案資料を作成、上層部への説明 提案資料テンプレート、導入効果資料 「承認されるだろうか」「導入後の問題はないか」 不安、期待 社内説得が難しい 稟議用資料テンプレート提供、経営層向けホワイトペーパー
契約・導入 契約手続き、初期設定、データ移行 契約書、導入支援担当、マニュアル 「スムーズに導入できるか」「社員は使いこなせるか」 期待、少し不安 導入の手間が大きい 専任担当による導入支援、オンボーディングプログラム
活用 日常業務で使用、社内に展開 カスタマーサポート、ヘルプページ、ユーザーコミュニティ 「業務効率は本当に改善したか」「困った時に相談できるか」 満足(または不満) 使い方が分からない機能がある 定期的なフォローアップ、活用ウェビナー、FAQ充実
更新・推奨 継続利用を決定、他部署にも推奨 更新案内、カスタマーサクセス担当 「継続する価値はあるか」「他社にも勧めたい」 信頼、愛着 更新を忘れる可能性 早期更新割引、紹介プログラム、アップグレード提案

このマップから、BtoB企業では**「稟議・承認」というフェーズが存在する**ことが分かります。

担当者が良いと思っても、上層部の承認が得られなければ導入に至りません。

そのため、経営層を説得するための材料(ROI試算、導入効果事例、稟議用資料など)を提供することが重要です。

また、契約後の**「導入支援」と「活用促進」**も重視すべきポイントです。

導入したものの使いこなせずに解約されてしまっては意味がありません。

オンボーディングプログラムや定期的なフォローアップにより、顧客の成功(カスタマーサクセス)を支援することが、継続率向上につながります。

BtoC(EC・小売)の事例

BtoC、特にECや小売のカスタマージャーニーマップは、感情的な要素が大きく、購買プロセスが比較的短いのが特徴です。

ここでは、アパレルブランドのオンラインストアの事例を紹介します。

ペルソナは、「25歳女性、会社員、ファッションに関心が高く、SNSをよく利用する」と設定します。

フェーズ 顧客行動 タッチポイント 思考 感情 課題 対応施策
認知 Instagramで好きなインフルエンサーが着ている服を見る Instagram広告、インフルエンサー投稿 「かわいい!」「どこのブランドだろう」 興奮、興味 ブランド名が分からない インフルエンサーとのタイアップ、ハッシュタグ活用
興味・関心 ブランドの公式アカウントをフォロー、Webサイトを訪問 Instagram公式アカウント、ブランドWebサイト 「他にどんなアイテムがあるんだろう」「価格帯は」 ワクワク、期待 情報が十分でない 商品写真の充実、着用イメージ動画、スタイリング提案
情報収集 商品詳細ページを閲覧、サイズ表を確認、口コミをチェック 商品ページ、レビューページ、FAQ 「自分に似合うだろうか」「サイズは合うか」「品質は」 期待、少し不安 サイズ感が分からない、実物を見ていない サイズガイド充実、着用レビュー、返品・交換ポリシーの明記
比較検討 他ブランドと価格や デザインを比較、友人に相談 比較サイト、口コミサイト、LINE 「他にもっと良い商品はないか」「価格は妥当か」 迷い、悩み 決め手に欠ける 限定クーポン、期間限定セール、ユーザーレビューの充実
購入 カートに入れて購入手続き ECサイト購入ページ 「本当にこれでいいか」「送料は」 決断、少し不安 購入フローが複雑、送料が高い シンプルな購入フロー、送料無料キャンペーン、ゲスト購入可能に
受取・使用 商品到着、開封、実際に着用 商品、同梱物(サンキューカード、スタイリングガイド) 「イメージ通りだろうか」「着心地は」 ドキドキ、期待 イメージと違った 丁寧な梱包、サンキューメッセージ、コーディネート提案書同梱
評価 SNSに投稿、友人に紹介、レビューを書く Instagram、Twitter、レビューページ 「満足!シェアしたい」または「ちょっと残念」 満足(または不満) シェアするきっかけがない 投稿キャンペーン、レビュー投稿でポイント付与、ハッシュタグ企画
リピート メルマガをチェック、新作を購入 メールマガジン、LINE公式アカウント、リターゲティング広告 「また買いたい」「新作はあるかな」 愛着、期待 新作情報が届かない 会員向け先行販売、ポイントプログラム、パーソナライズドメール

BtoCの特徴は、SNSや口コミの影響が非常に大きいことです。

認知段階ではInstagramなどのビジュアル重視のSNSが重要な役割を果たし、比較検討段階では他の購入者のレビューが意思決定に大きく影響します。

また、購入後の**「評価」「シェア」のフェーズ**を設計することも重要です。

顧客が自発的にSNSで投稿してくれれば、それが新たな顧客の認知につながるという好循環が生まれます。

そのため、「投稿したくなる体験」を設計することが、ECブランドの成長に直結します。

株式会社エッコでは、BtoC企業のSNSマーケティングやコンテンツ戦略の立案において、このようなカスタマージャーニーマップを活用した支援を行っています。

サービス業の事例

サービス業のカスタマージャーニーマップでは、購入前の期待と購入後の実体験のギャップが重要なポイントになります。

ここでは、オンライン英会話スクールの事例を見てみましょう。

ペルソナは、「30代男性、会社員、仕事で英語が必要だが話すのが苦手、オンラインで学びたい」と設定します。

フェーズ 顧客行動 タッチポイント 思考 感情 課題 対応施策
課題認識 仕事で英語が必要になり、スピーキング力不足を痛感 職場、社内研修 「英語を話せるようになりたい」「でも忙しい」 焦り、プレッシャー 学習方法が分からない 「忙しいビジネスパーソンのための英語学習法」記事、無料診断
情報収集 Googleで「オンライン英会話 初心者」と検索、複数サービスを比較 検索エンジン、比較サイト、YouTube 「どのサービスが良いか」「料金は」「初心者でも大丈夫か」 興味、不安 サービスの違いが分からない SEOコンテンツ、分かりやすい料金表、初心者向け特設ページ
比較検討 口コミを読む、無料体験レッスンを予約 口コミサイト、公式サイト、無料体験申込フォーム 「自分に合っているか」「続けられるか」「効果はあるか」 期待、緊張 いきなり外国人と話すのが怖い 日本人カウンセラーによる無料相談、学習プランの提案
体験 無料体験レッスンを受講 Skype/Zoomレッスン、体験後フォローメール 「思ったより話せた」または「難しかった」 安心感(または挫折感) 自分のレベルに合っていない レベル別の講師マッチング、体験後の丁寧なフィードバック
入会 料金プランを選択、会員登録、初回レッスン予約 申込フォーム、マイページ 「続けられるかな」「効果が出るかな」 期待、決意 どのプランが良いか迷う プラン選択ガイド、最初は少額プランを提案、いつでも変更可能
継続利用 定期的にレッスンを受講、復習する レッスン(講師)、学習教材、予約システム 「上達しているかな」「このまま続けて大丈夫か」 充実感(または不安) モチベーション維持が難しい、予約が面倒 学習の進捗可視化、定期的なカウンセリング、予約しやすいシステム
成果実感 仕事で英語を使う機会に成長を実感 職場、TOEIC試験 「上達した!」「続けてよかった」 達成感、自信 次の目標が見つからない 次のレベルの目標設定、上級者向けコース案内
ロイヤル化 長期継続、友人に紹介、SNSで体験談を投稿 紹介プログラム、SNS、レビューサイト 「もっと上を目指したい」「友人にも勧めたい」 愛着、感謝 紹介したいが方法が分からない 紹介特典プログラム、体験談投稿キャンペーン、コミュニティ形成

サービス業の特徴は、「体験」フェーズが非常に重要だということです。

無形のサービスだからこそ、まずは無料体験やトライアルで実際に体験してもらい、価値を実感してもらう必要があります。

また、継続利用フェーズでのフォローも欠かせません。

英会話スクールの場合、モチベーションの維持が最大の課題です。

学習の進捗を可視化したり、定期的にカウンセリングを行ったりすることで、挫折を防ぎ、継続率を高めることができます。

さらに、成果を実感した顧客が口コミや紹介につながるため、「成果実感」から「ロイヤル化」への流れを設計することが、サービス業の成長には不可欠です。

作成時の注意点とよくある失敗

思い込みや願望を入れない

カスタマージャーニーマップ作成で最もよくある失敗が、企業側の希望や思い込みを反映してしまうことです。

「顧客はきっとこの機能に魅力を感じているはずだ」「この広告を見たら興味を持つだろう」といった、企業目線の願望をマップに盛り込んでしまうと、実態とかけ離れたマップになってしまいます。

例えば、高機能な製品を開発した企業が、「顧客は高度な機能を求めている」と思い込んでマップを作成したとします。

しかし実際には、顧客は「シンプルで使いやすいこと」を最優先していたとしたら、そのマップに基づく施策は的外れになってしまいます。

カスタマージャーニーマップは、企業の希望に応じて顧客を変えるためのものではなく、顧客の実態を正しく理解するためのものです。

そのため、以下のような客観的なデータに基づいて作成することが極めて重要です。

客観的データの種類 具体例
顧客インタビュー 実際の購入者に購買プロセスをヒアリングする
アンケート調査 定量的に顧客の行動や意識を把握する
行動データ Webアクセス解析、購買履歴、アプリの利用状況など
VOC(顧客の声) カスタマーサポートへの問い合わせ、クレーム、要望
SNS・口コミ 顧客が自発的に投稿している生の声
営業担当者の報告 現場で顧客と接している担当者からの情報

特に、既存顧客がいる場合は、必ず実際の顧客の声を集めてからマップを作成しましょう。

新規事業で顧客がいない場合でも、想定顧客に近い人へのヒアリングや市場調査を実施することで、思い込みを排除できます。

マップ作成後も、「本当に顧客はこう考えているのか」「この行動は実際に取っているのか」と常に疑問を持ち、検証する姿勢が大切です。

マップ作成自体が目的化しない

2つ目のよくある失敗は、カスタマージャーニーマップを作ること自体が目的になってしまうことです。

「他社もやっているから」「上司に言われたから」という理由で、とりあえず作ってみたものの、作成後に全く活用されていない——このようなケースは少なくありません。

カスタマージャーニーマップは、あくまで手段であり、目的ではありません。

本来の目的は、マップを通じて顧客理解を深め、課題を発見し、具体的な施策を立案・実行して、ビジネス成果を向上させることです。

マップ作成自体が目的化しないために、以下のポイントを意識しましょう。

1.明確なゴールを最初に設定する

「何のためにこのマップを作るのか」「どのような成果を目指すのか」を明確にしてから作成に着手します。

例えば、「新規顧客獲得数を20%増やす」「購入後のリピート率を30%向上させる」といった具体的なゴールです。

2.KPIを必ず設定する

各フェーズでKPIを設定し、定期的に測定できる状態にします。

KPIがないと、マップが機能しているか検証できません。

3.作成後の活用計画を事前に決める

「誰が」「いつ」「どのように」マップを活用するのか、作成前に決めておきます。

例えば、「毎月のマーケティング会議で見直す」「四半期ごとに更新する」「新規施策立案時に必ず参照する」といったルールを設けます。

4.すぐに実行できる施策から着手する

マップで明らかになった課題のうち、まずは小さくても実行できる施策から始めます。

完璧なマップを作ろうとするよりも、80%の完成度で良いので早く作り、実際に使いながら改善していく方が効果的です。

株式会社エッコでは、カスタマージャーニーマップの作成支援だけでなく、作成後の活用方法や具体的な施策の立案まで、一貫してサポートしています。

定期的な見直しと更新が必要

3つ目の重要な注意点は、一度作ったマップをそのまま放置しないことです。

顧客を取り巻く環境は常に変化しています。

新しいSNSが登場したり、競合が新サービスを始めたり、社会情勢が変わったりすることで、顧客の行動や心理も変化します。

例えば、新型コロナウイルスの感染拡大時には、多くの企業で顧客行動が劇的に変化しました。

店舗での購入がオンライン購入に移行したり、対面セミナーがオンラインセミナーになったりと、タッチポイント自体が変わりました。

このような環境変化に対応するため、カスタマージャーニーマップは定期的に見直し、更新する必要があります。

更新のタイミング 理由
定期的な見直し(四半期ごと、半年ごと) データを基に継続的に改善するため
新商品・新サービスのリリース時 提供価値が変わるため
大きな市場環境の変化時 顧客行動が変化するため
競合の動向に大きな変化があった時 比較検討の基準が変わるため
施策実施後 効果検証と次の改善のため
KPIが目標から大きく乖離した時 マップと現実にズレが生じている可能性があるため

更新の際には、新たに集めた顧客データやKPIの実績値を基に、「マップ通りに顧客は行動しているか」「想定していた思考・感情は正しかったか」を検証します。

ズレがあれば修正し、新たな課題が見つかれば追加します。

また、実施した施策の効果も反映させます。

「この施策により、このフェーズでの離脱率が改善した」「新たなタッチポイントを追加したことで、認知が拡大した」といった成果を可視化することで、チーム全体でPDCAサイクルを回すことができます。

カスタマージャーニーマップは、**「作って終わり」ではなく、「作ってから始まる」**ツールなのです。

カスタマージャーニーマップを活かすポイント

部門横断のチーム編成

カスタマージャーニーマップを最大限に活かすためには、複数の部門が連携して取り組むことが不可欠です。

顧客の購買プロセスは、マーケティング部門だけで完結するものではありません。

認知段階では広報やマーケティング、情報収集段階ではWebサイトやコンテンツ制作、比較検討段階では営業、購入段階では販売やEC担当、購入後は カスタマーサポートやカスタマーサクセスと、各フェーズで異なる部門が関わります。

もし各部門が個別に動いていると、顧客体験に一貫性がなくなり、フェーズ間の連携がうまくいきません。

例えば、マーケティング部門が「高品質」を訴求して顧客を集めても、実際の商品が期待に応えられなければ、顧客は失望します。

逆に、素晴らしい商品があっても、マーケティングがうまくいかなければ顧客に届きません。

そのため、カスタマージャーニーマップの作成段階から、関係する全ての部門のメンバーを集めてチームを編成することが重要です。

部門 担当フェーズ 貢献できる情報・視点
マーケティング 認知、興味・関心 広告やコンテンツの効果、顧客の流入経路
営業 比較検討、購入 顧客が実際に悩むポイント、競合との比較で聞かれること
カスタマーサポート 購入後、利用 顧客からの問い合わせ内容、不満や要望
商品開発 全フェーズ 商品の強み・弱み、顧客に提供できる価値
Web/IT 情報収集、購入 サイトのユーザー行動データ、離脱ポイント
経営層 全体戦略 事業の方向性、投資判断

部門横断チームで作成することで、各部門が持つ異なる視点や情報を統合でき、より実態に即したマップが完成します。

また、作成プロセスに参加することで、各メンバーが顧客理解を深め、自分の業務が全体のどこに位置づけられるかを認識できます。

さらに、マップを基にした施策実行時にも、部門間の連携がスムーズになります。

名古屋でWebコンサルティングを提供する株式会社エッコでは、クライアント企業の部門横断プロジェクトをファシリテートし、チーム全体で顧客理解を深めるワークショップの運営も支援しています。

データドリブンな運用

カスタマージャーニーマップを継続的に活用し、成果につなげるためには、データに基づいた運用が欠かせません。

感覚や経験だけに頼るのではなく、客観的なデータを活用することで、マップの精度を高め、施策の効果を正確に測定できます。

データドリブンな運用には、以下のような要素が含まれます。

1.各フェーズのKPIを定期的に測定する

設定したKPIを、毎週または毎月測定し、目標値との乖離を確認します。

例えば、「認知フェーズ:月間サイト訪問者数10,000人」「比較検討フェーズ:資料ダウンロード率5%」「購入フェーズ:コンバージョン率2%」といったKPIを、GoogleアナリティクスやMAツールで継続的にモニタリングします。

2.ユーザー行動データを分析する

Webサイトのアクセス解析、ヒートマップ、セッション録画などのツールを活用し、実際のユーザーがどのように行動しているかを把握します。

「想定していた導線と異なる動きをしている」「このページで多くのユーザーが離脱している」といった発見があれば、マップを修正します。

3.A/Bテストで施策の効果を検証する

マップに基づいて実施した施策が本当に効果的かどうか、A/Bテストで検証します。

例えば、「商品ページに口コミを追加することで購入率が向上するか」をテストし、結果をマップにフィードバックします。

4.顧客データを統合して分析する

複数のツールやシステムに分散している顧客データを統合し、一人の顧客がどのような行動をたどっているかを追跡します。

CRM(顧客関係管理システム)やCDP(カスタマーデータプラットフォーム)を活用することで、より詳細な分析が可能になります。

データ活用のメリット 具体的な効果
客観的な判断ができる 主観や思い込みを排除し、事実に基づいた意思決定が可能
施策の効果を定量的に評価できる どの施策が効果的だったか、ROIを明確に把握できる
問題の早期発見ができる KPIの変化から、問題が深刻化する前に対処できる
マップの精度が向上する 実データに基づいて継続的に改善できる
説得力のある提案ができる データを示すことで、社内や経営層への説得力が増す

ただし、データだけに頼りすぎるのも注意が必要です。

数値では表れない顧客の感情や、定性的な情報も重要です。

データと顧客の生の声(インタビューやアンケート)を組み合わせることで、量と質の両面から顧客を理解することが、最も効果的なアプローチです。

顧客体験の継続的改善

カスタマージャーニーマップを活かす最後のポイントは、顧客体験を継続的に改善し続ける姿勢です。

一度マップを作成し、いくつか施策を実施したからといって、それで終わりではありません。

顧客体験の向上は、終わりのない継続的なプロセスです。

継続的改善のサイクルは、以下のように進めます。

1.現状を把握する(カスタマージャーニーマップの作成・更新)

まず、現在の顧客行動と体験を可視化します。

既にマップがある場合は、最新のデータで更新します。

2.課題を特定する

マップから、顧客が不満を感じている部分、離脱率が高い部分、改善余地がある部分を特定します。

優先順位をつけて、どこから改善するか決定します。

3.改善施策を立案・実行する

特定した課題に対して、具体的な施策を立案し、実行します。

小さく始めて、効果を検証しながら拡大していくアプローチが有効です。

4.効果を測定する

施策実施後、設定したKPIがどう変化したか測定します。

定量データだけでなく、顧客からのフィードバックも収集します。

5.学びを次に活かす

効果があった施策は他のフェーズにも展開し、効果がなかった施策は原因を分析して改善します。

この学びをマップに反映させ、次のサイクルにつなげます。

このPDCAサイクルを回し続けることで、顧客体験は少しずつ向上していきます。

改善のポイント 具体的なアプローチ
小さく始める 全体を一度に変えようとせず、1つのフェーズから改善する
仮説検証を繰り返す 「こうすれば改善するだろう」という仮説を立て、テストする
成功事例を横展開する あるフェーズで成功した施策を、他のフェーズにも応用する
失敗から学ぶ うまくいかなかった施策からも学び、次に活かす
顧客の声を聞き続ける 定期的にアンケートやインタビューを実施し、生の声を集める

特に重要なのは、顧客の期待を上回る体験を提供するという視点です。

顧客が「普通」だと思っている体験を提供するだけでは、競合との差別化にはなりません。

「期待以上だった」「感動した」と思ってもらえる体験を設計することで、顧客満足度が向上し、リピートや口コミにつながります。

例えば、ECサイトであれば、注文確認メールに手書き風のサンキューメッセージを添えたり、商品と一緒にスタイリング提案書を同梱したりすることで、小さな感動を生み出せます。

BtoB企業であれば、契約後の導入支援を手厚くし、顧客が確実に成果を出せるようサポートすることで、信頼関係を構築できます。

このように、カスタマージャーニーマップを活用しながら、常に「もっと良い顧客体験を提供するにはどうすればいいか」を考え続けることが、ビジネスの成長につながります。

株式会社エッコでは、カスタマージャーニーマップの作成から活用、そして継続的な改善までを一貫してサポートしており、名古屋を中心に多くの企業のマーケティング成果向上に貢献しています。

まとめ

カスタマージャーニーマップは、顧客が商品やサービスを認知してから購入し、さらに購入後も関係を継続するまでの一連のプロセスを視覚化したツールです。

デジタル化やSNSの普及により顧客接点が多様化し、購買行動が複雑化する現代において、顧客理解を深め、効果的なマーケティング施策を立案するために不可欠なものとなっています。

本記事では、カスタマージャーニーマップの定義から、種類、作成手順、具体例、注意点、活用のポイントまでを詳しく解説しました。

重要なポイントを改めて整理すると、以下の通りです。

  • 明確なゴールを設定してから作成する:何のためにマップを作るのか、目的を明確にすることが成功の第一歩です。
  • 実際の顧客データに基づいて作成する:企業の希望や思い込みではなく、顧客インタビューやアンケート、行動データなど客観的な情報を基にします。
  • ペルソナごとに作成する:ターゲットとなる顧客像を具体的に設定し、その人の行動と心理を丁寧に描きます。
  • 業種や目的に応じてカスタマイズする:テンプレートをそのまま使うのではなく、自社のビジネスに合った構造にします。
  • 部門横断で取り組む:マーケティング、営業、カスタマーサポートなど、複数の部門が連携することで実効性が高まります。
  • KPIを設定し、データで効果を測定する:作成して終わりではなく、継続的に測定・改善するための指標を設けます。
  • 定期的に見直し、更新する:顧客行動や市場環境の変化に合わせて、マップを進化させ続けます。

カスタマージャーニーマップは、単なる図表ではありません。

それは、顧客の視点に立ってビジネスを見直し、より良い顧客体験を設計し、組織全体で顧客志向を実現するための羅針盤です。

最初から完璧なマップを作ろうとする必要はありません。

まずは80%の完成度で良いので作成し、実際に使いながら改善していくことが大切です。

小さく始めて、PDCAサイクルを回し続けることで、マップの精度も施策の効果も向上していきます。

もし、「自社だけでは作成が難しい」「作ったものの活用方法が分からない」「より効果的なマーケティング施策を立案したい」とお考えであれば、専門家のサポートを受けることも有効な選択肢です。

名古屋のWebコンサルティング会社である株式会社エッコでは、カスタマージャーニーマップの作成支援から、データ分析、具体的なマーケティング施策の立案・実行まで、企業のマーケティング活動を総合的にサポートしています。

豊富な実績とノウハウを活かし、貴社のビジネス成長に貢献いたします。

この記事が、あなたのビジネスにおける顧客理解の深化と、マーケティング成果の向上に少しでもお役に立てれば幸いです。

カスタマージャーニーマップを活用して、顧客に愛されるビジネスを実現していきましょう。

 

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